研究課題/領域番号 |
26293280
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
藤井 博匡 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (70209013)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ストレス / 脳・神経 / 可視化 |
研究実績の概要 |
プロジェクト1の「磁気共鳴イメージングシステムによる画像評価システム整備の実証」について研究を行った。プロジェクト1では二つの課題について検討を行った。 ・第1課題:マウス頭部での磁気共鳴画像化システムの高速化と整備(藤井・赤羽担当)本課題のゴールは、高速磁気共鳴分子イメージングシステムを構築し、マウス頭部3次元(3D)画像を10秒で撮像し、MRIで撮像した解剖画像上にEPRからの酸化ストレス画像を重ね合わせる(co-registration)点である。藤井・赤羽らは、一連の共同研究によりEPRイメージング装置の高速化を進めており、EPR画像の高速化・高感度化を以下のように実施した。①高速EPRイメージング装置の準備1:磁場掃引の安定性の向上のため、FPGAを利用して磁場掃引を高速化する装置を完成させた。②高速EPRイメージング装置の準備2:共振器の更なる高感度化を行った。③高速EPRイメージング装置の準備3:画像のcoregistration 画像精度を向上させるため再構成アルゴリズムの改良が必要で、信号量が少ない投影方向など不必要な方向でのプロジェクションを省略する手法によりデータ取得時間の短縮を試みた。同一サイズの共振器(コイル)と共通のマウスベッドを使用し、MRI解剖画像上にEPRからの画像をco-registrationした。 ・第2課題:Blood Brain Barrier (BBB)透過性を持つ酸化ストレス感受性ニトロキシド造影剤の開発(佐藤・藤井担当)BBB透過性を有し、ミトコンドリアや細胞膜、レセプターに局在するニトロキシドプローブの合成・開発研究を行った。合成することができたプローブは水溶液として調整可能であった。100~200mMと言う高濃度に調整でき、マウス尾静脈より投与し、脳内への移行性をEPRイメージング画像として確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト1の「磁気共鳴イメージングシステムによる画像評価システム整備の実証」について研究を行った。プロジェクト1での二つの課題の達成度は以下の通りである。 ・第1課題:マウス頭部での磁気共鳴画像化システムの高速化と整備に関しては、高速磁気共鳴分子イメージングシステムを構築し、マウス頭部3次元(3D)画像を10秒で撮像出来る段間に達し、MRIで撮像した解剖画像上にEPRからの酸化ストレス画像を重ね合わせる(co-registration)点もほぼ達成できている。 ①高速EPRイメージング装置の準備に関しても、磁場掃引の安定性をはかるため、FPGAを利用して磁場掃引を高速化する装置を完成させ、現在磁場掃引速度50ミリ秒を実現できている。 ②高速EPRイメージング装置の準備2:共振器の更なる高感度化を行った。マウス頭部専用のマイクロ波ブリッジおよびマイクロ波共振器を製作し、従来より高感度で信号を観測することが可能となった。 ③高速EPRイメージング装置の準備3:画像のco-registrationでは、画像精度を向上させるため再構成アルゴリズムの改良が必要であったが特に信号が少ない投影方向からの信号S/Nの向上や、データ取得が不必要な方向でのプロジェクションを省略する手法によりデータ取得時間の短縮を試みを行ったところ、有望な成果が得られてきた。 ・第2課題:Blood Brain Barrier (BBB)透過性を持つ酸化ストレス感受性ニトロキシド造影剤の開発 に関しては、BBB透過性を持ち、脳内局在性を持ったニトロキシドの合成が出来ており、おおむね計画通りに進んでいる。マウスへの投与も出来ており、EPRイメージング装置により脳内に分布したニトロキシド分子を視覚化できている。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト2の「磁気共鳴イメージング装置による酸化ストレス状態(病態)の評価研究」を行う。 第1課題:脳疾患モデルマウスの作製と病態のモニタリング ROSによる酸化ストレスの影響が注目されているアルツハイマー病 (Alzheimer disease: AD) モデルマウスの酸化ストレス評価研究を実施する。ADモデルマウスはアルツハイマー病遺伝子組み換えモデルとして広く用いられているB6.Cg-Tg(APdE9:APPswe, PSEN1dE9)85DBo/Jマウスを用いる。同月齢のADモデルマウスとコントロール健常マウスを準備し、脳内酸化ストレス状態を磁気共鳴イメージング法で経時的に評価する。ADモデルマウス製作は連携研究者・下濱が担当する。 第2課題:脳疾患モデルマウスの酸化ストレス評価について 酸化ストレス状態の評価は、酸化ストレス感受性ニトロキシド造影剤を投与したマウス頭部において経時的にEPRイメージング画像を撮像し、一連の画像から酸化ストレス度合いの指標である還元反応速度定数を求める。マウス頭部二次元画像の各ピクセル(128×128)での信号値を用いて速度定数を計算し、酸化ストレス状態を視覚化する酸化ストレスマップ(レドックスマップ)を得る。炎症モデルマウスの脳内において酸化ストレスの亢進が画像から識別でき、更に、脳内のROIで求めたニトロキシドプローブの反応速度値から、酸化ストレス状態を定量的に比較評価することを目指す。また、脳内全域でのトータルな酸化ストレス度合いの定量評価や、脳内の酸化ストレス変動部位を特定することも実施する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予想していた薬品の購入が年度内に出来なかったため、残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算に組み入れ、薬品を購入する計画である。
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