研究課題/領域番号 |
26293286
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 雅昭 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00623109)
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研究分担者 |
毛受 暁史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30527081)
青山 晃博 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60379047)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺移植 / 慢性拒絶 |
研究実績の概要 |
平成26年度の目標は、第一に同所性ラット肺移植モデルの確立、第二に、異なる免疫抑制レベルでの同所性肺移植モデルにおける肺内リンパ組織新生と慢性拒絶の表現型の観察研究であった。同所性ラット肺移植モデルは、Brown-Norway rat をドナー、Lewis rat をレシピエントとして早期に確立することができた。異なる免疫抑制プロトコール(cyclosporine の投与期間の違い)によって、術後14週の時点で、早期の急性拒絶によるグラフト肺組織の破壊と荒廃から、ほぼまったく拒絶が起こっていない状態までのスペクトラムを再現することに成功した。 とくに興味深いのは、術後5週の時点で拒絶反応が見られない投与プロトコールでもcyclosporineが比較的早期に中止されている場合には14週の時点で気道周囲にlymphoid neogenesisと考えられるリンパ球の集簇と気道の狭小化が見られることであり、これはヒトのbronchiolitis obliterans またはその前駆病変とされるlymphocytic bronchiolitisの組織に類似していることから、比較的マイルドな慢性拒絶がBOSにつながるとの仮説を支持する結果である。 一方、現時点で術後14週の結果がまだ得られていないが、もう少し免疫抑制を弱めたプロトコールでは、術後5週の時点で気道周囲に加えて胸膜直下や末梢肺にリンパ球の集簇を認める例がある。これらが長期的には気道周囲だけでなく末梢肺・胸膜の炎症と組織リモデリングをおこし、restrictive allograft syndromeに似た病変を作り出す可能性があり、最終結果が待たれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット肺移植の手技を確立するとともに、動物実験としては比較的長期間にわたる観察研究において、有用な予備実験結果が得られた。これを基に抗体産生を介した慢性拒絶の実験・研究は予定通り27年度以降進める予定である。 一方、比較的弱い免疫抑制をかけた個体では予想以上に炎症反応が遷延しており、組織は線維化に至っていない。つまり移植後2週間の急性期を免疫抑制で乗り越えれば、そのあとの拒絶反応は比較的マイルドで遷延性である。これは文字通りの「慢性拒絶」としてはよいモデルだが、実際の臨床像とは乖離しており、実際には患者に対し免疫抑制療法が強化されることがその理由として考えられる。従って、実験計画の修正が必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、これらの結果をさらに確固たるものとするとともに、メカニズムの詳細に迫る研究、とくにlymphoid neogenesisの役割として局所の抗体産生の果たす役割をさらに追及していく。すでに確認された炎症(リンパ球の集簇)が実際にリンパ組織新生であることを免疫染色で確認し、また過去の研究で用いたのと同様、組織培養を4日間行い、その上清をflow cytometryで検証することで、抗ドナー抗体が肺内局所で産生されているかを検証する。 一方、予想外なことに、比較的弱い免疫抑制をかけた個体では炎症反応が遷延しており、組織は線維化に至っていない。つまり移植後2週間の急性期を免疫抑制で乗り越えれば、そのあとの拒絶反応は比較的マイルドで遷延性である。これは文字通りの「慢性拒絶」としてはよいモデルだが、実際の臨床像とは乖離しており、実際には患者に対し免疫抑制療法が強化されることがその理由として考えられる。従って、実験計画の追加修正が必要となったため、以下の実験系を追加する。 移植後0日~14日または21日までの免疫抑制+移植後84日~98日の免疫抑制(Cyclosporne A, 5 mg/kg) の投与をBrown-Norway ratをドナー、Lewisラットをレシピエントとして行う。98日目で犠牲死させた個体から移植肺を回収し、組織学的に検証を行う。とくに線維化が臨床検体でみられるBOSやRASに類似した局在を示すかどうかを、alpha-smooth muscle actin染色、trichrome染色などを用いて検証する。
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