研究課題/領域番号 |
26293286
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 雅昭 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00623109)
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研究分担者 |
毛受 暁史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30527081)
青山 晃博 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60379047)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺移植 / 慢性拒絶 / BOS / RAS / 移植免疫 |
研究実績の概要 |
本研究では、移植肺内に生ずるリンパ組織新生が肺移植後慢性拒絶に及ぼす影響をラット肺移植モデルを用いて調べた。これまでの研究成果の概要は以下にまとめられる。1)免疫抑制の程度が不十分であれば、移植肺内の新生リンパ組織においては局所での抗ドナーMHC class I抗体産生が認められる。2)抗ドナー抗体産生に比例して、慢性拒絶病変の進行が認められる。3) 免疫抑制の程度に応じて、移植肺内ではBOSではなくRASパターンの変化(気道線維化に加えて、胸膜直下~肺実質のfibroelastosis様変化)を生じる。 この結果は2016年4月にWashington DCで行われる国際心肺移植学会(International Society for Heart and Lung Transplantation) において、2題の一般演題、1題の招待講演の中で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、移植肺内に生ずるリンパ組織新生が肺移植後慢性拒絶に及ぼす影響をラット肺移植モデルを用いて調べた。これまでの研究成果の概要は以下にまとめられる。1)免疫抑制の程度が不十分であれば、移植肺内の新生リンパ組織においては局所での抗ドナーMHC class I抗体産生が認められる。2)抗ドナー抗体産生に比例して、慢性拒絶病変の進行が認められる。3) 免疫抑制の程度に応じて、移植肺内ではBOSではなくRASパターンの変化(気道線維化に加えて、胸膜直下~肺実質のfibroelastosis様変化)を生じる。1)2)については論文にまとめ"Intrapulmonary Local Production of Antibodies Specific to Donor Major Histocompatibility Complex Class I in Association with the Progression of Chronic Rejection in Lung Allografts"のタイトルで投稿準備中、3)については"Poorly Controlled Alloimmune Response Induces Restrictive Allograft Syndrome-like Fibrosis in the Pleura and Lung Parenchyma after Lung Transplantation"のタイトルで論文投稿中。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、免疫抑制と局所抗体産生、移植肺の病変のパターンについての理解が大きく前進した。ここで生じた大きな疑問は、免疫抑制状態の程度によってBOSタイプとRASタイプの病変が生じるのではなく、免疫抑制の状態によってRASパターン内での程度の違いを生じるとのはなぜかである。新たな仮説は、「グラフトへの経気道的な刺激(例:感染、誤嚥)が気道を中心とした炎症、BOSパターンの慢性拒絶の誘導に関与する」である。これをさらに検証するため、これまで使用してきたモデルに経気道的刺激(LPSの少量反復投与など)を行い、BOSパターンの慢性拒絶が誘導されるか、またこれまでの研究で生じた局所での抗体産生が気道を中心に生じるのかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度の研究では、26年度に行った動物実験に対するまとめ作業を優先した。その分、英語論文校正等に対する費用が増えたが、動物実験そのものに対する予算を執行が予想を下回った。また計画していた国際学会での発表、共同研究を行っている海外施設との研究の打ち合わせが27年度内に実現しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
遅れていた分の動物実験を28年度に行う予定である。特に、新たな仮説である、BOSの発症には気道への刺激が気道中心の炎症を引き起こすために重要であるとの仮説を検討する。 また28年度には、国際学会での発表、共同研究を行っている海外施設との研究の打ち合わせ等を行う予定であり、出張費にも使用する。国際学会に関しては既に28年4月の国際心肺移植学会(ワシントンDC)での発表を予定している。
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