研究課題
肺移植の5年生存率は50-70%にとどまり,その最大の原因が慢性拒絶である.肺移植後の慢性拒絶は、気道病変を中心としたBronchiolitis obliterans syndrome (BOS)と、研究代表者(佐藤)らが提唱した、末梢病変を中心とする予後不良なrestrictive allograft syndrome (RAS)が知られている。しかしどのような機序で異なる型の慢性拒絶が生じるかは明らかでなく、治療方法も確立されていない。今回我々は、科学研究費を用いたラット肺移植モデルの実験を通して,移植肺内の新生リンパ組織が抗ドナー特異抗体を局所産生することを見出した(Miyamoto E, Sato M, et al. Transplantation 2017).本研究はproof-of-conceptとして重要と考えられ、現在、トロント大学の協力を得て、ヒト肺移植臨床検体での検討が進んでいる。また京都大と東京大で基礎研究を行い下記の知見を得た.1)ラット肺移植モデルで免疫抑制を段階的に変化させ,免疫抑制が不十分な場合はRAS様の組織変化(胸膜末梢肺を中心とする線維化)を呈する(Miyamoto E, et al. 投稿中)。2)ラット肺移植モデルで,免疫抑制下で細菌成分であるリポ多糖(LPS)を気道内に投与すると,気道中心の炎症と拒絶反応を生じBOS様病変となる(Takahagi A, 投稿準備中).3)マウス同所気管移植モデルで,気道線維芽細胞がToll-like receptor (TLR) 4を発現し,LPS刺激で活性化・線維化を増悪させる(Kawashima M, et al. 投稿準備中)。これらは肺移植後慢性拒絶の型を考えるうえでいずれも重要と考えられ、さらなる発展と臨床応用が期待される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Transplantation
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10.1097/TP.0000000000001665