研究課題/領域番号 |
26293290
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
馬場 秀夫 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (20240905)
|
研究分担者 |
石本 崇胤 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (00594889)
馬場 祥史 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 講師 (20599708)
岩槻 政晃 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (50452777)
今村 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70583045)
渡邊 雅之 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 食道担当部長 (80254639)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 癌幹細胞 / CD44 / Bmi-1 / FBXW7 / microRNA / 消化器癌 |
研究実績の概要 |
消化器癌細胞株を用いたmiRNA PCR Array解析から、CD44発現を制御するmicroRNA としてmiR-328を抽出した。更に腫瘍間質中に存在するマクロファージが産生する活性酸素により癌細胞のmiR-328発現が低下、その結果CD44発現が誘導される事を明らかにした。この発現制御メカニズムを介して高発現するCD44は癌幹細胞としての性質獲得や維持に働いているだけでなく、胃癌の背景粘膜である化生胃粘膜上皮においても高発現しており、ヘリコバクターピロリを介した胃癌の発癌過程にも深く関わる可能性が示された。 2.活性化マクロファージと共培養した胃癌細胞株を用いてmicroRNA microarrayを行った。共培養群において低下したmicroRNAの中でmiR-30e*に注目した。更なる機能解析によりmiR-30e*はBmi-1の3’-UTRに相補的に結合すること、消化器癌細胞のスフェア形成能を制御することを示した。ヒト胃癌臨床検体において、Bmi1発現とmiR-30e*発現は有意な逆相関性を認めていた。 3.Trastuzumab耐性株を用いたmiRNA PCR Array解析によって、Trastuzumab耐性にかかわるmicroRNAを抽出した。Arrayによって同定されたmiR-223とFBXW7の発現には逆相関を認め、miR-223強制発現にてTrastuzumabに対して耐性を示したが、miR-223の発現抑制によりTrastuzumabの感受性が増加した。miR-223強制発現株では、Trastuzumab投与下においてアポトーシスの割合が減少した。以上より、胃癌細胞株において、miR-223-FBXW7 pathwayがHER2受容体の下流シグナルを変化させ、アポトーシスを抑えることでTrastuzumab耐性に関与することが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に基づいて、microRNA網羅的解析をおこない癌幹細胞マーカー発現および治療抵抗性に関わる候補microRNAを抽出した。それぞれの候補microRNAについて標的遺伝子の3’-UTRに対する相補的な結合を介した直接的な発現制御機構の存在を証明している。更に消化器癌細胞株を用いてmicroRNA modulatorによるgain of function、loss of function細胞を構築し、増殖、アポトーシス、スフェア形成能などの細胞特性に与える影響について詳細な検討をおこなった。これまでに細胞株を用いた基礎的な検討は終了しており、次の段階として消化器癌術後組織や血液検体からのがん幹細胞分画の抽出および免疫不全マウスへの移植など生体レベルでの解析を遂行する。現在までに得られた研究成果については、各種学会および定期的な市民公開講座において発表しており、原著論文として国際的科学研究誌へ報告している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から、消化器癌進展及び分子標的薬剤抵抗性を制御するmicroRNAを複数同定し機能解析をおこなった。また、腫瘍間質に存在するマクロファージがパラクラインメカニズムを介して癌幹細胞に関連したmicroRNA-gene pathwayに常に影響を与えるため、癌幹細胞の遺伝子発現パターンはダイナミックに変化することが示唆された。今後は原発巣と転移巣における癌幹細胞マーカーの発現変化や制御機構について、大腸がん同時性肝転移症例からのPDX (patient derived xenograft) modelを用いた解析を進める。更に、血液検体からCELLSEARCH SYSTEMを用いた循環微量癌細胞(circulating tumor cell; CTC)の検出・分離を行いCTCにおける癌幹細胞マーカーの発現および機能的役割について解析をおこなう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
試薬・消耗品等に関して当初想定より安価で購入ができ、また、医局内の共用設備、試薬を使用することが出来たため。
|
次年度使用額の使用計画 |
原発巣と転移巣における癌幹細胞マーカーの発現変化や制御機構について解析を進めるにあたり、試薬・消耗品購入費に充てる。また、研究成果は随時、学会及び学術誌にて発表予定であり、その旅費や、論文投稿料を支払う予定である。
|