研究課題
1.肝細胞癌の癌幹細胞性を制御するシグナルとしてHippo pathwayに注目し、pathwayのtransducerであるTAZとYAPの発現バランスが腫瘍形成能および癌幹細胞マーカーの発現に深く関わる事を明らかにした。さらにTAZの発現を抑制するmicroRNAとしてmiR-9-3pを見出し、肝細胞癌におけるmiR-9-3pを介したTAZ発現制御機構を明らかにした。2.食道扁平上皮癌においてはmiR-145がmethylationにより発現抑制されることで発癌に関与する事、進行大腸癌に対する抗EGFR療法にmiR-31-5p発現の量が影響する事を示し、発癌から進行癌の治療抵抗性にもmicroRNA発現量が深く関わることが明らかになった。3.臨床検体を用いた解析として血液検体からCELLSEARCH SYSTEMを用いた循環微量癌細胞(circulating tumor cell; CTC)の検出・分離を行い、癌幹細胞マーカーであるCD44陽性細胞を分取した。更にCTCを免疫不全マウスへ移植し、CD44陽性分画が高い腫瘍形成能を有すること、シスチントランスポーターであるxCTの発現が高い事を明らかにした。この結果は、これまで私たちが示してきた消化器癌細胞株を用いた解析所見を支持するものであり、CTCにおける癌幹細胞マーカーの発現が転移巣形成に重要であることが示された。
2: おおむね順調に進展している
昨年度はmicroRNA網羅的解析をおこない癌幹細胞マーカー発現および治療抵抗性に関わる候補microRNAを抽出し、候補microRNAの機能解析および各種癌進展に与える影響について検討を継続的に行なった。本年度も、新たに肝細胞癌、食道扁平上皮癌、大腸癌において重要なmicroRNA-gene pathwayを見出し報告している。更に次のステップとして消化器癌術後組織や血液検体からのがん幹細胞分画の抽出および免疫不全マウスへの移植など生体レベルでの解析を遂行した。特に、血液中の循環微量癌細胞の検討では、がん転移巣形成メカニズムに関わる重要な知見を得た。得られた研究成果については、原著論文として国際的科学研究誌へ報告し各種学会および定期的な市民公開講座において発表をおこなっている。
本年度までの研究結果から、各種消化器癌において進展及び分子標的薬剤抵抗性を制御するmicroRNAを複数同定し機能解析をおこなった。今後は、進行消化器癌に対する新しい分子標的薬剤開発を視野に入れ、転移巣形成に関わる因子に照準を絞った研究を展開する。具体的に、私たちは大腸癌術後検体からのPDX (patient derived xenograft) model作製を継続的に行っており、癌幹細胞マーカーを強発現し腫瘍形成能が高い癌幹細胞株を樹立している。この癌幹細胞株を用いて、通常の細胞株では検討出来ない癌幹細胞特異的なシグナルを見出し、治療標的分子としての可能性を検討する。
消耗品につき、比較的安価で購入が出来、また医局保管のものをしようすることが出来たため。
今後は、進行消化器癌に対する新しい分子標的薬剤開発を視野に入れ、転移巣形成に関わる因子に照準を絞り、癌幹細胞株を用いて通常の細胞株では検討出来ない癌幹細胞特異的なシグナルを見出し、治療標的分子としての可能性を検討する予定であり、細胞株樹立にかかる実験消耗品費購入費、及びデータ管理、資料作成等にかかる事務補佐員の給与に充てる予定である。また、最終年度でもあるため、研究成果発表のための旅費にも充てたいと考える。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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