研究課題/領域番号 |
26293291
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小池 直人 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (50301081)
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研究分担者 |
武部 貴則 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (20612625)
谷口 英樹 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70292555)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医学 / 移植・再生医療 / 微小血管網 / 高次肝組織 |
研究実績の概要 |
Enhanced green fluorescence protein (EGFP)やKusabira Orange(KO)等を遺伝子導入し可視化できるようにしたヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)、ヒト骨髄由来間葉系細胞(hMSC)、hiPS細胞から作製した肝前駆細胞hiPS-Hepを共培養し、vitroで肝芽を作製した。この肝芽をクラニアルウインドウ内に移植し、生体顕微鏡で経時的に観察した。その結果、hiPS-Hepは急速に増殖し、HUVECは血管網をこの中で形成した。ローダミンデキストランをトレーサーとして静注すると、HUVECからなる微小血管網に宿主よりの血流が観察できた。 次に、hiPSより文献情報を基にCD31陽性の血管内皮細胞の分化誘導を試みた。するとCD31陽性細胞は確認できるものの、文献で報告されているものに比べ、CD31陽性率は極めて低いことが明らかとなった。このため播種細胞密度などを検討しながら複数回試行したがCD31陽性細胞数は低かった。現在、肝芽形成に十分な量の血管内皮細胞の分化誘導を得るために、他の文献情報なども参考にしつつ、プロトコルの改良中である。 また、高次肝組織内で今後構築を目指している動静脈、門脈、胆管のマーカーとなる分子の免疫染色を試みた。胆管のマーカーとしてCK19、動脈のマーカーとしてEphrin B2、静脈のマーカーとしてEph B4、門脈のマーカーとしてJagged-1、血管壁細胞のマーカーとしてSMA等を用いた。これまで染色方法が確立されていなかった静脈マーカーEph B4は凍結、パラフィン切片上でほぼ使用可能となった。しかし、門脈、動脈マーカーに関してはパラフィン切片での染色不良や、高バックグラウンドの問題等で、まだ、プロトコルの改善が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では最終的に動静脈や、門脈、胆汁分泌が可能な胆管構造を有するヒト型高次肝組織の構築を目指している。そのために、Nature誌で発表した肝組織の基となる肝芽のソースとしてiPS-Hepを用いるのみならず、血管内皮細胞もiPSより誘導することを目指している。そこでまず、ヒトiPS細胞から内皮細胞を誘導することを試みた。検討の結果、報告されているいくつかの血管内皮細胞の分化誘導法では効率よく増殖性の高い血管内皮細胞を分化誘導することが困難であることが明らかとなった。これを改善するためには、論文に記載されていない細かな諸条件などを最適化する必要があること、ヒトiPS細胞のクローンを変更すること、未分化細胞の維持培養方法を検討することなどが考えられ、肝芽形成実験に利用するためには、今後、安定的に分化誘導可能な改良法の確立が必須であることが明らかとなった。また、動静脈、門脈、胆管等の構造を有する高次肝組織を構築するにあたり、血管系のマーカーの確立が予想より困難であることが明らかとなった。高次肝組織構造を確認するために、凍結切片のみならず、より、微小構造が詳細に観察できるパラフィン切片での観察も目指しており、ヒト型高次肝組織の構築の達成に向けた新たな課題が明らかとなり順調な進捗であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
動静脈や、門脈、胆汁分泌が可能な胆管構造を有するヒト型高次肝組織の構築を目指す為に、予定通りiPS細胞より内皮細胞の誘導構築を達成する。特にiPS細胞からの内皮細胞の分化誘導プロトコルにおける課題解決を目指し、クローンの変更、細かな諸条件の検討、他の文献のプロトコルの検討などを実施する。さらにヒトの再生医療への利用を目指すため、改良したプロトコルを基盤に肝芽形成実験を行う。その後、肝芽を移植実験に利用することで、従来のHUVECを用いる方法とタンパク質合成機能などの肝機能評価を行う。また、できた内皮細胞を動静脈、門脈等、正常肝組織内に存在する異なる血管系に分化させるために、肝微小組織構築に重要と考えられているJagged-1等のNotchシグナルに関わる遺伝子を導入した間葉系細胞の共培養を検討している。
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