ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)、ヒト骨髄由来間葉系細胞(hMSC)、hiPS細胞から作製した肝前駆細胞hiPS-Hepを共培養し、vitroで肝芽を作製した。その後、この肝芽をクラニアルウインドウ(CW)内に移植し、その成長過程を生体顕微鏡で経時的に観察した。hiPSより文献情報を基にCD31陽性の血管内皮細胞、hMSCが作成された。しかし、門脈血流のない頭蓋内では腹腔内に比べ、構築された肝組織の機能が低く、形態的にも不完全であることが事予測された。したがって、本研究の課題であった、all iPSの肝芽を基にした高次肝組織内で構築される胆管、微小血管網の組織評価は、CW内ではなく、肝内、及び腎被膜下に移植した肝芽から構築された肝組織の標本にて行った。 高次肝組織内で構築を目指している動静脈、門脈、胆管のマーカーとなる分子の免疫染色法が確立し、肝細胞マーカーのアルブミン、HNF4a、胆管のマーカーCK19、CK8、SOX9、CD10、動脈のマーカーEphrin B2、静脈のマーカーEph B4、門脈のマーカーJagged-1、血管内皮及び壁細胞のマーカーCD31、SMA等を用いて、高次肝組織の形態形成を確認した。構築された肝組織ではHNF4a陽性の肝細胞索様の構造と、CK19、SOX9陽性の胆管様の腺管構造を呈する部分が観察された。肝細胞索様の構造内にはCD10陽性の毛細胆管様の形態が認められたが胆汁産生は明らかでなかった。肝細胞索構造を呈する部分でもCK19が陽性を示し、まだ分化が完全ではない事が予想された。高次肝組織内の血管内皮はヒトCD31陽性でマウス由来の血管は認められなかった。構築された肝組織内の微小血管ではマーカー的にも構造的にも動脈への分化は確認できなかった。今後、より正常な微小血管網と胆管構造を有する高次肝組織を構築するために、他の文献情報なども参考にしつつ、プロトコルの改良を行っていく予定である。
|