研究課題/領域番号 |
26293294
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
小玉 正太 福岡大学, 医学部, 教授 (90549338)
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研究分担者 |
伊東 威 福岡大学, 医学部, 助教 (70634400)
西中村 瞳 福岡大学, 膵島研究所, ポストドクター (90597692)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医学・再生医療 / 膵島移植 / 膵島再生 / 1型糖尿病 / 脾臓 |
研究実績の概要 |
1型糖尿病の根治治療である膵島移植は膵臓器移植に比べ低侵襲で合併症も少なく、低血糖発作やインスリン治療から解放される治療法として期待されている。さらに、移植成績はその単離法と免疫抑制剤の改良と伴に、数年後は膵臓器移植成績と並ぶ可能性が高い。また現在、厚労科研で進行する、新たな免疫抑制剤を用いた膵島移植の治験成果により、将来保険診療として数年後認可される可能性が高い。しかし、今後脳死ドナー提供が多く、数回に渡りレシピエントに移植される機会の多い欧米と異なり、初回一回の移植によりインスリン離脱を成功させる事が、膵島移植が膵臓器移植に代わる低侵襲治療法として国内で定着する、最大の課題となっている。 Streptozotocin(STZ)で誘導された膵島障害、糖尿病モデルマウスの脾臓へ膵島を移植したところ、他の膵島移植部位候補である肝臓、腎被膜下の14%、33%の総膵島量で血糖が正常化していた。組織染色では生着グラフト内部にリンパ管ネットワークの構築を認め(LYVE-1陽性細胞の進展)、血管内皮(vWF陽性)細胞の多寡同様に有意な因子となっていた。さらに膵島生着時脾内の転写因子を中心とした発現遺伝子を網羅的に検索した。脾臓内へ同種同型の膵島細胞25個移植下群で、生着せず高血糖を呈した移植後2日目(Group A)と、移植後140日経過して補助的に移植した腎被膜下の膵島を摘出し正常血糖を維持した膵島細胞25個移植群(Group B)との転写因子の発現を比較したところ有意な候補遺伝子を認め、 real time PCR にてもその有意差を確認した。加えて、脾臓内のインスリン蛋白量は、Group B がGroup A に比べ優位に増していた事より、膵島細胞25個で正常血糖を維持できた Group B に移植膵島再生現象が強く示唆される結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STZ で誘導された膵島障害、糖尿病モデルマウスの脾臓へ、脾臓内へ同種同型の膵島細胞25個移植した群で、生着せず高血糖を呈した移植後2日目のGroup A と、移植後140日経過して補助的に移植した腎被膜下の膵島を摘出し、正常血糖を維持したGroup B との転写因子の発現を比較したところ Bnc1, Eomes, Hey2 に発現上昇、Epas1, Fosl2, Smad3 に発現低下を認め、 real time PCR にてもそれらの有意差を確認した。加えて、脾臓内のインスリン蛋白量は、Group B がGroup A に比べ優位に増していた事より、膵島細胞25個で正常血糖を維持されていた群では、候補遺伝子に関連した遺伝子調節機構により、脾内で再生現象を惹起している可能性が示唆された。現在候補遺伝子の機能発現あるいは機能抑制モデルを用い、in vitro および in vivo でその効果を検証中である。組織染色では生着グラフト内部にリンパ管ネットワークの構築を認め(LYVE-1陽性細胞の進展)、血管内皮(vWF陽性)細胞の多寡同様に有意な因子となっていた。さらに自然発症1型糖尿病モデル(Non Obese Diabetes: NOD)マウスで移植後発現する脾内候補遺伝子が、STZ により誘導された糖尿病モデルマウスへ移植された脾内候補遺伝子と動態を同じくするか現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
再生機転を促す効率的な移植部位である脾臓に、単一ドナーからの単離膵島を移植し、複数レシピエントのインスリン離脱をもたらす事を、自然発症1型糖尿病モデル(Non Obese Diabetes: NOD)マウスで証明し、更に膵島再生に起因する候補蛋白・遺伝子を、蛋白質量分析や遺伝子解析で検索し、リンパ管増殖因子も含め関連する調節機構を明らかにする。申請研究のゴールとして、臨床応用を目指しカニクイザルで膵島脾内移植プロトコールを確立する。 <1> 自然発症1型糖尿病モデルNODマウスを用いた同種同系および同種異系の膵島脾内移植 <3> Streptozotocin (STZ) 追加膵切除により糖尿病を発症したカニクイザルへの自家および同種膵島脾内移植、と<1><3>のみの実験計画を当初予定した。 しかしながら、現在厚労科研で進行する、新たな免疫抑制剤を用いた膵島移植の治験成果により、膵島移植は将来保険診療として数年後認可される可能性が高いが、同種膵島ドナー数が増加せず慢性的なドナー不足がここ数年更に進行している。そのため異種膵島移植も次のオプションとして、以前に比べその重要度と期待が高まっている。とこれに対応すべく、本年度以降施行予定である<3>の前に、 <2> STZ 誘導糖尿病 Lewis ラットに免疫隔離膜で細胞工学的に被膜化されたブタ膵島を脾臓に移植 (異種膵島移植)、を施行する事とした。 異種細胞移植では通常の同種異系の免疫拒絶反応に加え、補体も関与し同種移植に比べ更にグラフと生着日数は短い。このような免疫反応を回避するために1990年代から免疫隔離膜が開発されている。しかし、初期型ではマクロファージ等の遊走と繊維化が高度に誘発され、その長期グラフト生着効果は得られなかった。現在はアルギン酸を用いた3層膜カプセルを用いて、ブタ膵島のカプセル化を行い良好な成績を得ている。
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