研究実績の概要 |
胆管癌は極めて予後不良な難治性の癌である。胆管癌細胞株でバイオパニングによって我々が見出したcop35 は, 胆管癌に特異的に結合, 細胞内移行し5FU による増殖抑制作用を増強することを報告したペプチドであるが, GRP78に結合してその働きを抑制する働きが見られることから,オートファジーとの関係が推測され, クロロキン, 3MAと同様オートファジーを, 人体に無害に抑制すると予想した。分子標的薬, ソラフェニブは同源の肝癌において,オートファジーの抑制によりその増殖抑制効果が亢進するため, 胆管癌においても, cop35との併用によってソラフェニブの増殖抑制効果が亢進すると予測して胆管癌細胞株(CCC: RBE, YSCCC)で検討したところ, ソラフェニブ単独投与時に較べ抑制度は増したが, 肝癌の結果から予想された効果には及ばなかった。そこでまず,ソラフェニブによるオートファジーの機序を肝癌細胞株(HCC: HLF, Huh-7)と比較検討したところ, HCCと比較してCCCではオートファジーを抑制する機構が働いていることが推測された。更に, STAT3に対するソラフェニブの抑制効果をHCCと比較検討したところ, CCCでSTAT3のリン酸化の抑制度が有意に小さいという結果を得たため, オートファジーとSTAT3とのクロストークを検討する必要性がでてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HCCではセルサーバイバルに向かうオートファジーがソラフェニブの増殖抑制効果を邪魔するため, オートファジーを抑制するとソラフェニブの効果が大きくなるが, HCCと較べてCCCではソラフェニブに対してオートファジーが亢進しておらず, オートファジーを抑制する機構が働いていることが推測された。我々は, HCCと比較してCCCでソラフェニブの効果としてのSTAT3のリン酸化の抑制度が小さいことを結果として得ていることから, ソラフェニブ投与下でのオートファジーとSTAT3リン酸化とのクロストークに注目してオートファジーの機序検討を進めて行けば, 胆管癌におけるソラフェニブとcop35の併用効果の増強に繋がるルートが解明できるとの方針が立った。
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今後の研究の推進方策 |
オートファジーの抑制がSTAT3のリン酸化を抑制する, またはSTAT3のリン酸化抑制でオートファジーが抑制されるという報告があるため, ソラフェニブ投与下でのSTAT3のリン酸化の抑制度がHCCと比較してCCCで小さかったという結果がオートファジーの抑制と関連しているか, 即ち, CCCでのソラフェニブ投与下におけるオートファジーとSTAT3リン酸化にクロストークがあるかをSTAT3リン酸化抑制剤等を用いて検討し, 更に下流のROSの挙動も含めてソラフェニブ投与下におけるCCCのオートファジーの機構を検討していく。
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