研究実績の概要 |
胆道癌は未だ予後が悪く外科的切除を除き有効な治療法は確立されていない.当研究室が見出した胆管癌細胞特異的結合ペプチドCop35(CCA-binding oligopeptide 35)は, 胆管癌のクラスリン重鎖に特異的に結合し, エンドサイトーシスにより細胞内移行して細胞内で小胞体シャペロンであるGRP78と結合する.GRP78はオートファジーを誘導することから胆管癌細胞株においてオートファジーを介した増殖抑制の系を考えた.ラパマイシンのアナログであるエベロリムスはmTORC1を介し癌細胞の増殖を抑制するが、 一方で癌細胞の生存に好都合なオートファジー亢進作用も有するため、 このオートファジー亢進作用を選択的に抑制できれば、エベロリムスの抗腫瘍効果の増強が期待できる。そこで、胆管癌細胞株において、 エベロリムスの増殖抑制効果に対するCop35併用効果を検討した. エベロリムス単独投与でも胆管癌株RBEの増殖は抑制されたが、 エベロリムスと10μMのCop35の併用で増殖抑制効果が有意に増強された. 同時に、 LC3-IIおよびp62のWestern blot 解析により、 エベロリムスの単独投与ではオートファジーの亢進が確認されたが、 Cop35の併用によりエベロリムスにより増加したLC3-IIの抑制と減少したp62の回復が見られ、 Cop35の併用によるオートファジーの抑制が示された. この抑制は、 Cop35がGRP78に結合してオートファジー誘導が低下した結果と推測されたため、 Cop35とGRP78との解離を検討した.すでにCop35とGRP78の結合は高濃度のCop35で外れることが分かったため、 100μMの高濃度Cop35を併用したところ、 エベロリムスの増殖抑制増強効果が消失した。以上より, chloroquineや3MAの合成薬品ではなく、 低濃度のCop35とエベロリムスの併用で、胆管癌細胞に対するエベロリムスの増殖抑制効果が増強されることが示され、臨床応用の可能性がさらに高まった.
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