研究課題/領域番号 |
26293301
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
楠 正人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50192026)
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研究分担者 |
問山 裕二 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (00422824)
井上 靖浩 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (20324535)
毛利 靖彦 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70345974)
沖上 正人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), リサーチアソシエイト (90722596)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 大腸腺腫 / 血清マーカー / microRNAs / エキソソーム |
研究実績の概要 |
本研究は ①大腸癌発癌過程(前癌病変から癌病変)にて特異的に発現するmicroRNAを網羅的に解析し、分泌されたそれらのmiRNAsが血清で検出できるか否かを検証することで、この癌発生過程を踏まえた散発性大腸癌の血清早期診断マーカーを同定することである。 ②他施設協同研究にて集積終了した内視鏡施行前の患者血清を用いた前向き検証試験を行い、同定したmiRNAsの診断マーカーとしての精度検定を行うことである。 ①に関してはすでに発癌過程にて特異的に発現し、さらに血清中に分泌するものを複数個同定している。それらに関しても他施設で集めた血清を用いて検証実験を開始している。選択したmiRNAsの中で、miR-1290は大腸癌患者において血清中で発現が有意に高くなり、早期診断の可能性を示唆したほか、予後予測を可能とする予後マーカーとしても有用であること、また組織におけるmiR-1290発現が、癌進展機序に深く関与することを報告した。さらに他のmiRNAsに関しても、血清中と血清エキソソーム中におけるmiRNA発現レベルを同一患者血清で評価し、miRNA特異的に血清ならびに血清エキソソーム分画において発現変化が起こり、いずれも大腸腺腫検出において有用な早期診断マーカーとなり得ることを報告した。現在も網羅的解析より同定した大腸癌組織特異的に発現変化が起こるmiRNAの機能解析を施行中である。 またさらに血清中エキソソーム分画に存在するmiRNAs発現を網羅的に解析するうえで、癌細胞より特異的に分泌されるエキソソームに着目し、現在、癌細胞ならびに正常上皮細胞より分泌されたエキソソームの抽出をおこなっている。今後はエキソソーム蛋白の網羅的解析を行い、癌由来エキソソーム分画を同定する新規マーカーを同定し、それをもちいることでさらなるエキソソーム内miRNA発現変化を評価していく予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、大腸癌発癌過程のおいて、組織中ならびに血清中で発現が変化するmicroRNAsを網羅的に解析し、複数のmicroRNAsを集積した血清を用いて検証実験をしている。すでに複数の未知・ならびに既知のmicroRNAsが前癌病変である大腸腺腫患者の血清診断マーカーとして証明でき、論文報告をしてきた。現在もさらに未知のmicroRNAsの機能解析を進めているほか、エキソソーム分画の解析へと進めている。しかしながらエキソソーム抽出行程におけるプロトコール修正や癌由来エキソソーム特異的マーカーの同定にやや時間を要しており、現在も継続施行中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、癌特異的に分泌されるエキソソームを同定するために、癌細胞株ならびに正常上皮細胞株から分泌されたエキソソームの抽出をおこなっており、今後はエキソソーム蛋白の網羅的解析を予定している。その結果から、上皮特異的膜蛋白ならにに大腸癌組織特異的膜蛋白の同定後、それらを用いてエキソソームを分離し、大腸癌特異的エキソソームならびにそれに包埋されている大腸癌由来の遺伝子情報を用いたprecision medicineを可能とするliquid biopsyの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画通り、順調にデータを集積できたため、試薬調達の減額がはかれた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に試薬などの購入に使用する.
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