研究課題/領域番号 |
26293305
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 助教 (20452708)
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研究分担者 |
大塚 隆生 九州大学, 大学病院, 講師 (20372766)
村田 正治 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 准教授 (30304744)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵癌 / 膵星細胞 / 細胞外マトリックス / leading cell / 基質リモデリング |
研究実績の概要 |
我々は、膵星細胞が細胞外マトリックスに与える影響を検討するため、膵星細胞が作成する細胞外マトリックスを作り出す技術を用いて、ヒト膵癌切除組織から樹立した膵星細胞から細胞外マトリックスを作成した。三次元細胞外マトリックスは、フィブロネクチンやⅠ型コラーゲンを豊富に有し、通常ディッシュ上での培養と比較して、癌細胞の上皮間葉転換を促進することが判明した。また、その線維配列を解析すると、低酸素下においては通常酸素下と比較して誘因にマトリックスの線維の平行性が増加した。膵星細胞が作り出した細胞外マトリックス上で膵癌細胞を培養して観察したところ、マトリックスの平行な線維の割合が多いほど、膵癌細胞の運動軌跡が増加した。 次に、膵癌浸潤を先導するleading cellの検討を行うため、コラーゲン・ゲルを用いた三次元培養モデルを作成し、膵癌細胞と膵星細胞の培養を行ったところ、ゲル内に膵癌細胞と膵星細胞の共培養群では、膵癌細胞または膵星細胞単独群と比較して、有意に膵癌細胞の浸潤・増殖能が増加した。また膵癌細胞の浸潤に先立って膵星細胞の浸潤がみられ、leading cellの役割を担う膵星細胞が存在することが判明した。さらに膵星細胞が浸潤したコラーゲン・ゲルは浸潤がないものと比較して、有意にコラーゲンの線維方向に変化がみられ、浸潤した膵星細胞が基質リモデリングを行っていることが示唆された。膵星細胞の基質リモデリング因子のひとつとして、コラーゲン取り込みレセプターであるEndo180に注目した。Endo180を抑制した膵星細胞と、膵癌との共培養において、膵癌の浸潤が低下した。膵星細胞のEndo180を抑制すると、膵星細胞の基質リモデリング能が低下し、癌浸潤が抑制されると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト切除組織由来膵星細胞から三次元細胞外マトリックスを作成することに成功し、その線維構築の評価方法も確立したこと、さらに作成した三次元細胞外マトリックスを使用して、癌細胞と細胞外マトリックスの相互作用も検討でき、平行な線維成分が多いほど癌細胞の運動が増強することが判明した。また膵癌におけるleading cellについては、その役割を担っている膵星細胞が存在することを証明し、膵癌進展におけるleading cellの役割として、間質リモデリングの関与が示唆されたこと、さらに膵星細胞の基質リモデリング因子のひとつとしてEndo180が同定できるなど、一定の成果を得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられた。 細胞外マトリックスの線維配列の変化といった質的特徴の変化が癌浸潤に関与していることが確認できたが、膵星胞のphenotypeによる細胞外マトリックスの質的特徴と量的特性パターンについては今後検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
Leading cellの主な役割は基質リモデリングと考えられ、細胞外マトリックスの線維配列の変化といった質的特徴の変化が癌浸潤に関与していることが確認できた。今後はさらに細胞外マトリックスの質的特徴や量的特徴と、癌浸潤についての関連を調べるため、硬度や配列が異なる細胞外マトリックス上で培養した膵癌細胞の形態、及び増殖能、遊走能、浸潤能を評価する。また膵星胞のphenotypeによって細胞外マトリックスの質的特徴と量的特性パターンについて違いがあるか検討を行っていく。 膵星細胞の基質リモデリング因子のひとつとしてEndo180を同定しており、Endo180を抑制することでどのような機序で膵星細胞の基質リモデリングが抑制されるか検討を行う。またEndo180が治療標的となりうるか、マウスを用いた抑制実験を行い、有効性を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は順調に進展しており、効率的に資金を使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究用試薬、抗体、培養用試薬、培養用器材、標本作成料、マウス飼育費
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