研究課題
オートファジーは細胞内の分解機構であり主に飢餓により誘導されるが、がんの発生や増殖進展にも関与することが報告されている。オートファジーに関与するオートファゴソームに結合する蛋白質としてLC-3があり、またautophagyを誘導する蛋白質としてbeclin-1がある。LC-3やbeclin-1において様々な癌腫にて予後との関連が報告されているが、胃癌オートファジーに関する報告は少ない。手術胃癌症例を用いて免疫組織学的染色によりLC-3、beclin-1の発現を評価し、臨床病理学的背景、予後について検討した。また胃癌細胞株2MD3を用いてストレス環境におけるLC3A、LC3B、beclin-1発現についてリアルタイムrt-PCR法で検討した。その結果LC-3陽性は79例(%)、beclin-1強陽性は130例(%)であり、そのうちオートファジー陽性は38例(%)であった。LC3陽性例、beclin1陽性例とそれぞれ陰性群の間で臨床病理因子に関して比較を行ったところ、分化型、高深達度、浸潤増殖様式、リンパ管侵襲、静脈侵襲に関して有意に相関が認められた。5年生存率に関しては、LC3陽性例、beclin1陽性例ともに陰性例と比較すると有意に生存率の低下を認めた。また、LC3陽性例、beclin1陽性例の生存に関する単変量解析では有意差を認めたが、多変量解析においては、独立予後因子とはならなかった。リアルタイムrtPCR法ではストレス暴露24時間後において、栄養飢餓(グルコース欠乏もしくはアミノ酸欠乏)条件でLC3A、LC3B、beclin-1発現が亢進していた。
2: おおむね順調に進展している
今回の検討により、LC-3陽性、beclin-1強陽性で判定されるautophagyは胃癌の悪性度に影響し、オートファジーを抑制することにより、癌の増殖進展を抑制することを明らかにすることが出来た。
種々のストレス環境下にある胃がん細胞を用いて、オートファジー抑制が癌の増殖進展にどのような影響を及ぼすか検討する。
27年度に予定していた国際学会の発表を取りやめ28年度に行うこととした。27年度に予定していたマイクロアレイ解析を28年度に行うこととした。
国際学会学会の出席予定。マイクロアレイ解析が追加された。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Anticancer Research
巻: 36 ページ: 129-136