研究課題/領域番号 |
26293307
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
平川 弘聖 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 医学部附属病院長 (40188652)
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研究分担者 |
八代 正和 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (60305638)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / p62 |
研究実績の概要 |
p62/SQSTM1(以下p62)はオートファジーにより選択的に分解される蛋白であるが、その他にNF-kB経路や酸化ストレスに関与するNrf2経路に関わることが報告されており、肺癌や乳癌についてはリンパ節転移や予後との関連が報告されている。胃癌に関して報告はなく、今回我々は、胃癌におけるp62発現について検討を行った。当科で手術を行った胃癌症例(542例)を材料に、免疫組織学的染色によりp62の発現を評価し、臨床病理学的背景について検討した。p62発現の判定は、染色された細胞の染色強度や占有率をスコア化し、それぞれ掛け合わせた値を算出しscore:4以上を陽性と判定した。また胃癌細胞株におけるp62発現についてリアルタイムrtPCR法とウェスタンブロット法を用いて検討した。その結果、p62陽性は123例、陰性419例であった。両群間で臨床病理因子に関して比較を行ったところ、スキルス型、低分化型、T2以深、リンパ節転移、腹膜転移、腹水細胞診陽性、浸潤増殖様式、リンパ管侵襲、脈管侵襲、腫瘍径5cm以上に関して相関関係が認められた。5年生存率に関しては、陽性例は陰性例と比較すると有意(69.8%:53.9%、P=0.0012)に生存率の低下を認めた。また胃癌症例全体の多変量解析においては独立予後因子とはならなかったが、リンパ節転移陽性ステージII/III症例においてはスキルス型、脈管侵襲に加えp62陽性が独立した予後因子となった。リアルタイムrtPCRでの胃癌細胞株におけるp62のmRNA発現の解析ではocum12が他の細胞株と比較し有意に高かった。また、グルコース飢餓におけるp62の蛋白発現をocum12を用いてウェスタンブロットにて解析すると、グルコース飢餓24時間後においてp62の発現は低下していた。以上の結果からp62は胃癌の悪性度に関与する因子であり、p62はリンパ節転移陽性胃癌において有用な予後予測因子となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回の検討により、p62が胃癌のリンパ節転移などの悪性度に関与することが明らかにされ、治療標的分子の可能性が示唆され、29年度の研究に発展することが考えられた。また、27年度の研究である癌幹細胞の治療標的にもp62を用いたオートファジー抑制が有用であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
p62を標的とした分子標的治療、あるいはオートファジー抑制剤を用いて、胃癌の増殖進展治療の可能性を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回の検討により、p62が胃癌のリンパ節転移などの悪性度に関与することが明らかにされ、治療標的分子の可能性が示唆され、29年度の研究に発展することが考えられ,29年度の研究費用とした。
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次年度使用額の使用計画 |
p62阻害剤あるいはオートファジー阻害剤がスキルス胃癌幹細胞の増殖抑制に有用であるか検討する。
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