研究課題
静脈グラフトを用いた下肢末梢動脈バイパス術において、静脈グラフトが狭窄したり閉塞することは再血行再建術や下肢大切断につながる可能性のある重大なイベントである。しかし、これまで静脈グラフト閉塞のリスク因子は十分に解明されていない。本研究では120例のバイパスグラフトを前向き臨床研究に登録し、その後の臨床経過を追跡してグラフトおよび患者の予後を明らかにするとともに、術前に採取した血液検討し、グラフト狭窄及び閉塞に関わる因子を検討してきた。その結果、術前因子として、心不全、女性、血漿酸化ストレス(d-ROMs)がグラフト閉塞危険因子として検出された。心不全の関与は特に強く、血行動態がグラフトリモデリングに関与していることを考慮し、循環中に存在するexosome内のmicroRNAsにも着目し、次世代シークエンスを用いた網羅的遺伝子発現検索を行い、グラフト不全に関与するmicroRNAsも検出している。女性の関与については、特に進行性内膜肥厚の発生に寄与していることが分かり、されに術前の酸化ストレスが女性で有意に亢進していた。本結果の妥当性を検討するためにsingle vein graft 246肢を後ろ向きに検討した結果、進行性内膜肥厚の発生に性差が認められ、特に足部感染を伴う症例でその傾向が著明であったことから、酸化ストレス亢進にさらに炎症がさらに加わることで、内膜肥厚が助長されることが示唆された。グラフト狭窄・閉塞のバイオマーカーとして、d-ROMsが候補となるほか、本研究で得られたいくつかのmiRNAのどれが有力なバイオマーカーとなりうるか今後のさらなる解析が期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Vascular Surgery
巻: in press ページ: in press
巻: 67 ページ: 826-837
10.1016/jvs.2017.07.116