研究課題
リンパ浮腫動物モデルの作製と検証Microsurgeryテクニックを持いて新しい二次性リンパ浮腫の治療術式を開発するためには、ラット以上の大きさの動物モデルが必要である。我々はラットを用いて実験行い、これまでにヒトの二次性リンパ浮腫と病理学的に極めて酷似した動物モデルの作製に取り組んできた。放射線照射を行わず、純粋に骨盤内ならびに下肢のリンパ節切除することで、リンパ浮腫を発症させる事を目指した。その結果、本モデルが持続的に下肢の浮腫を来たし、なおかつ慢性期にはヒトの二次性リンパ浮腫と同様に組織の脂肪沈着と線維化を来すことが判明した。これらの結果はインドシアニングリーン蛍光リンパ管造影や、蛍光顕微鏡、超音波顕微鏡などで確認された。リンパ浮腫の病態メカニズムの検討急性期にはマクロファージを中心とする炎症細胞が集積し、リンパ管の拡張から組織中にリンパが貯留することにより浮腫を来している。一方、慢性期にはリンパ管の拡張はなくなり、次第にリンパ管は消失していく。一方、組織には脂肪細胞の増生と線維化が進み、ヒトにおける象皮病のような病態を呈してくることが判明した。その分子生物学的機序としては、急性期に集積するmacrophageがTGF-betaを放出し、これが線維芽細胞から筋線維芽細胞へのtransdifferentiationを誘導することが判明した。この筋線維芽細胞が化発にcollagenを産生することにより組織の線維化が進んでいくことが判明した。
2: おおむね順調に進展している
既に目的としたヒトと酷似した二次性リンパ浮腫動物モデルの作製に成功し、組織学的にも検証し得た。それを用いて、分子生物学的に浮腫と線維化を来す機序のkeyとなるmoleculeの同定も行えた。
ヒトの二次性リンパ浮腫の組織生検を行い、動物モデルの治験から得られたkey molecule(TGF-beta)の関与がヒトでも実際に存在ことを証明する。具体的には、二次性リンパ浮腫の患者の患側肢と健側肢の両方から政権を行って組織を採取する。ここから線維芽細胞を採取して培養系を作製する。健側肢から採取した線維芽細胞にTGF-betaを投与して、筋線維芽細胞へのtransdifferentiationが起きうるか、さらにはcollagenの産生をupregulateするかを観察する。同時に患側肢組織中の筋線維芽細胞の同定と、collagen産生mRNAの発現を検討する。線維化のkey moleculeであるTGF-betaを抑制する物質としてエイコサペンタエン酸を動物モデルに投与し、線維化を抑制することにより、将来の治療薬としての可能性について検討を行う予定である。また分子生物学的にも前述した線維芽細胞、筋線維芽細胞の培養系を用いて、エイコサペンタエン酸がTGF-betaによるcollagen産生刺激を抑制しうるか否かを検討する。
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