研究課題/領域番号 |
26293311
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮川 繁 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授(常勤) (70544237)
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研究分担者 |
今西 悠基子 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10707582)
戸田 宏一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40379235)
川村 匡 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70583011) [辞退]
福嶌 五月 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80596867)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 免疫拒絶 / 他家移植 / 心筋細胞 |
研究実績の概要 |
細胞移植に対する拒絶反応は組織生検が困難であるため、in vivoを反映するin vitro評価法構築が必要である。移植細胞に対する獲得免疫応答は、移植細胞が直接レシピエントの免疫担当細胞に抗原提示を行うdirect pathwayだけではなく、移植細胞を抗原提示細胞が貪食し、免疫担当細胞(CD4陽性T細胞)に抗原提示を行い、細胞傷害性T細胞(CD8陽性T細胞)による細胞性免疫反応、抗体産生による液性免疫反応の各段階を経て形成されるindirect pathwayが主と考えられる。indirect pathwayの最初の評価として移植細胞に対する抗原提示細胞の貪食能について評価した。 ヒト末梢血単核球から樹状細胞(PBMC-DC)を分化誘導し、CFSEで染色したヒトiPS細胞と共培養し、フローサイトメトリーにてPBMC-DC分画にCFSE陽性化細胞が存在すること、および顕微鏡にてPBMC-DC内にCFSEで染色された断片が存在することを確認した。iPS細胞由来心筋細胞を貪食し、抗原提示能を有すると思われる成熟樹状細胞をstimulatorとし、responderをヒト同一個体末梢血由来のT細胞として、リンパ球混合培養試験(indirect MLR)を行った。Responderをstimulatorと共培養し増殖反応を定量化したが、CD4,CD8陽性細胞ともに増殖は示さなかった。今回実験に用いた個体(ヒト)はヒトiPS由来心筋細胞移植をされていないため、MLRにおいてリンパ球が増殖反応を示さなかったと考えられる。 上記と並行して、カニクイザルで他家移植を行い、MHC三座ホモ個体から樹立されたiPS細胞からGFP蛍光を有する心筋細胞を誘導し、シート化して心臓に移植し、8週にわたりモニターした。ヘテロ由来の細胞より長期に残存すること、免疫抑制剤投与が必須であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
混合リンパ球反応(MLR)については、評価手法を習得できた。 カニクイザルの他家移植については、正常な心機能を持つ個体への移植と拒絶反応を解析した。免疫抑制剤の投与法や血中動態についての基礎的エータも取得できた。次のステップである心筋梗塞モデルへの移植に関しては、まず心筋梗塞モデルの作成を試みている。カニクイザルは個体が高価であるため、梗塞モデル作成の成功率は研究遂行上重要なファクターとなる。現在、的確な梗塞モデルを作成する手技を獲得し、次の実験へのステップを固めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今回実験に用いた個体(ヒト)はヒトiPS由来心筋細胞移植をされておらず、MLRにおいてリンパ球が増殖反応を示さなかったと考えられる。今後は同種他家移植モデルでの検討が必要であり、マウスあるいはカニクイザルを用い、混合リンパ球反応(MLR)を用いた同種他家のiPS細胞移植における拒絶反応評価の実験を行う。 ヒトでの他家移植を考える際、免疫抑制剤の投与のプロトコールを考慮する必要がある。このモデル系として、カニクイザルで三座ホモ由来iPS細胞由来心筋細胞シートを作成し、心筋梗塞モデルカニクイザルへの移植を行い、ヘテロ由来細胞の移植と比較する。移植後の拒絶反応については、移植細胞の残存・生着の確認、心機能の評価を数か月にわたって行い、免疫抑制剤投与のプロトコール検討のためのデータを取得する。
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