研究課題
重症心不全に対するiPS細胞由来心筋細胞による再生治療に際し、他家由来iPS細胞を使用する場合、免疫拒絶反応が問題となる。対策としてMHC適合移植が考慮されているが、移植細胞の生着延長や心機能改善に関しては十分検討されていない。本研究では、同種他家iPS細胞由来心筋細胞のMHC適合移植における心機能改善効果を心筋梗塞モデルを用いて検討した。GFP遺伝子導入したiPS細胞を心筋細胞へ分化させてシート化し、MHC適合移植群と非適合移植群の心筋梗塞モデルに移植し、コントロール群と比較した。さらにiPS細胞移植群は免疫抑制剤を6ヶ月継続群と3ヶ月で中止する群に分けた。MHC適合・非適合移植群にて経時的に高いGFP蛍光強度を持続したが、3-4か月にかけては低下傾向であった。またMHC適合群は非適合群に比べ蛍光強度が長く持続し、免疫抑制剤3剤を併用したMHC適合群では、3か月でGFP陽性細胞の残存が確認され、免疫細胞の浸潤は認めなかった。一方非適合群では、免疫抑制剤の継続あるいは中止に関わらず、3か月時点でGFP陽性かつsarcomeric-actinin陽性の細胞が認められた。しかし、非適合移植群では免疫抑制剤を継続して使用しても、3あるいは4か月でCD3陽性Tリンパ球の浸潤を認め拒絶反応が示唆された。梗塞作製後2週間で、左室収縮末期容積と左室駆出率は有意に増悪したが、MHC適合、非適合の両群で、移植後1か月でコントロール群と比較し、心機能が改善し、その後も比較的心機能は維持された。Acetate-PETにて心筋酸素消費の予備能の変化を調べた。コントロール群と比較して、MHC適合、非適合移植の両群で、移植後1か月に心筋酸素消費の予備能の改善を認めたが、6か月はやや増悪傾向であった。
2: おおむね順調に進展している
心筋梗塞モデルを確立し、またGFP導入iPS細胞から心筋細胞への分化誘導にも成功しており、開胸下での移植、IVISでの蛍光観察、長期にわたるデータ取得など、大動物を用いた実験系を確立させた。
MHC適合群で免疫抑制剤併用、あるいは中止の条件化でさらに長期の心機能データを取得し、アロ移植における機能改善と免疫抑制剤の使用プロトコールを確立する。
試薬および実験に必要な消耗品費用を予定より抑えることができたため
次年度も引き続いて必要となる組織化学染色用抗体等の購入費用として使用する
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
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