研究課題
iPS細胞由来心筋細胞移植は重症心不全に対する再生医療として期待されているが他家細胞を移植する際の免疫学的な問題点は解決されていない。間葉系幹細胞は骨髄移植後のGVHD治療薬として使用。その機序は免疫寛容を引起すことが報告されている。iPS細胞由来心筋細胞移植時にMSCを併用移植することで生着が延長するかを検討。ルシフェラーゼ遺伝子を導入したiPS細胞由来心筋細胞を作成しIVISを用いて生着を評価。免疫抑制剤を使用せずiPS細胞由来心筋細胞の他家移植を施行した場合移植9日目には残存細胞を認めなかったがMSCを併用移植した場合移植17日目までiPS細胞由来心筋細胞の残存を認めた。7日目の移植部位を免疫染色したところMSCを併用移植した場合制御性T細胞の誘導やCD8陽性T細胞のアポトーシスが多く認められた。制御性T細胞の誘導に必要なサイトカインの発現が多く抗炎症サイトカインIL-10の発現も移植後多く見られた。制御性T細胞除去モデルでは同様の効果が見られなかったためMSC併用移植により制御性T細胞が誘導され免疫寛容を引き起こすと考えられた。獲得免疫をコントロールできたとしても移植した細胞は被膜を持たないため自然免疫による拒絶を受けやすいと考える。iPS細胞由来心筋細胞に対する自然免疫機序を解明し自然免疫を制御することを目的とした。自家iPS細胞由来心筋細胞を移植部位の免疫染色ではNK細胞の集積を有意に認めた。iPS細胞由来心筋細胞はNK細胞の抑制リガンドMHCクラスIの発現が低くNK細胞に対する活性化リガンドの発現が高い傾向にあった。またNK細胞除去モデルに移植したところ生着率の上昇が見られたため自家iPS細胞由来心筋細胞移植における自然免疫にはNK細胞が強く関与していると考える。今後NK細胞に対するリガンドの発現コントロールにより自然免疫が制御できる可能性が示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。