(目的)胸腹部大動脈瘤手術における脊髄虚血による脊髄麻痺(対麻痺)は重篤な合併症で今なお解決の課題が多い。脊髄間葉系幹細胞を用いた脊髄障害の再生治療は挑戦的な治療法である。ラットの脊髄間葉系幹細胞を微小重量培養で大量に増やし、尾静脈から注射すれば脊髄再生が得られると考え実験を前年度から継続した。 (方法)ラットの腸骨から採取した脊髄間葉系幹細胞を10-3Gで細胞培養が可能な微小重力細胞培養器(Gravite)で培養した。3日間の間葉系幹細胞培養を行った。ラット下大動脈をバルーンで30分単純遮断して脊髄虚血モデルを作成した。バルーン閉塞で対麻痺は全群で作成できた。微小重力培養した脊髄間葉系幹細胞10の4乗個を2mlの生食に混ぜ尾静脈から注射した治療群と生食2mlを尾静脈から注入したコントロール群の2群間で脊髄障害改善度を比較検討を行った。 (結果)微小重力培養した脊髄間葉系幹細胞を10の4乗個を2mlの生食に混ぜ尾静脈から注射した治療群において明らかに脊髄再生効果が見られ、ラット下肢の運動機能が改善した。脊髄の免疫組織学的検査にても微小重力培養した脊髄間葉系幹細胞を10の4乗個を2mlの生食に混ぜ尾静脈から注射した治療群において、障害脊髄への脊髄間葉系幹細胞の取り込みが見られ脊髄再生が起こっていることが確認された。 (結論)ラットの脊髄障害モデルで微小重力培養した脊髄間葉系幹細胞を10の4乗個を2mlの生食に混ぜ尾静脈から注射した治療は有用であった。しかし、人体における安全性は確立されていないので臨床応用は行わなかった。
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