研究課題/領域番号 |
26293313
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
千本松 孝明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70216563)
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研究分担者 |
加藤 英政 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (50292123)
井口 篤志 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (90222851)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / 心筋細胞 / ANP分泌細胞 |
研究実績の概要 |
分担研究者より供給されるTET1 stabilizedヒトiPS細胞を用いた中胚葉誘導(心筋細胞群誘導)並びに患者心房組織並びに皮膚組織からの線維芽細胞分別法の確立し、そして皮膚由来線維芽細胞細胞を用いたヒトiPS細胞誘導-中胚葉誘導(心筋細胞群誘導)は平成26年度に確立することが出来た。心筋細胞群誘導に関しては、ActivinAを高濃度加えることにより約2週間の誘導期間から10-11日間という数日間の時短に成功した。この実験はすでに10回以上成功を収めており、プロトコールとして完成したと考えている。心筋細胞誘導において細胞塊を形成させることは極めて重要であるが、一方で誘導された心筋細胞群には心室筋細胞、心房筋細胞、ペースメーカー細胞、伝導系細胞が誘導されており、これらを分別することが極めて重要となる。細胞分別はFACSを用いて行うが、その条件として細胞の単一化が必要であるが、この段階での細胞損失が極めて高く、改善が必要であると考えている。また、SIRPA I抗体を用いて心筋細胞群から心筋細胞の分別は数回の実験であるが問題なく可能と考えているが、心房筋分別に必要な至適な表面抗原はなく、現在いくつかの抗体を作成中である。 興味深いことに、患者から分別培養した心房由来線維芽細胞は、ヒトiPS細胞誘導に皮膚組織と同様のプロトコールではiPS細胞誘導が、全くかからないことが判明した。増殖性は皮膚のそれとほとんど変わらず、GFPを用いた遺伝子導入効率も十分であったが、現時点では成功出来ていない。技術的な問題なのか、同じ線維芽細胞でも細胞特性が異なるためか原因を解明する上で、RNA, レトロウイルスを含め数種類の導入法を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度して、概ね順調であり、一部実験は先行している。線維芽細胞分別法、皮膚由来線維芽細胞からヒトiPS細胞誘導、そしてそれらを用いた心筋細胞群誘導のプロトコールの確立は終了した。しかし、上述したように左房由来線維芽細胞を用いたiPS細胞誘導は、少なくとも皮膚由来線維芽細胞の誘導で用いたプロトコールでは全く誘導は掛からない。増殖性を有した体細胞であれば、iPS細胞誘導は可能とするストカスティックモデル(Stochastic model)と、特定の細胞腫のみに未分化細胞に変化する能力が備わっていると考えられるエリートモデル(Elite model)が存在する。一般的にはストカスティックモデルが研究者の間に浸透しているが、例え同一患者由来で皮膚由来線維芽細胞からのヒトiPS細胞誘導がうまく行っても、左房由来線維芽細胞からのiPS細胞誘導は困難である。現在その原因の解明と同時にiPS誘導プロトコールとして最も汎用性のある実験系を確認している。 中胚葉誘導は、Mendjanらの論文(Cell Stem Cell. 2014 Sep 4;15(3):310-25. )より高濃度ActivinAを加える事により約2日間の時短を達成することが可能となった。その結果非常に効率の高く、安定性の高い中胚葉誘導が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、初年度に生じた問題点、すなわち心房由来線維芽細胞を用いたiPS細胞誘導困難の原因解明、その原因解明の1つとして組織由来別線維芽細胞特性の相違、iPS細胞誘導における至適線維芽細胞の存在の確認を行い、可能であれば同一患者の異なる組織から誘導されたヒトiPS細胞の特性(性格)をゲノムDNAメチル化を用いて評価する。 他は、研究計画通り心房筋分別に注力する。SIRPA I抗体を用いて心筋細胞群から心筋細胞の分別は今までのところ順調に実験が進んでいるが、心室筋のT管を構成し、心室筋に多く発現が認められるPacsin3は細胞膜裏打ち蛋白であり、膜表面には露出しておらずFACS用抗体としては使うことは出来ない。その為、細胞内部RNAの検出可能なプローブSmartFlare検出プローブを用いたFACSを行う予定であるが、これは心筋細胞の捕食能に依存した実験法であり、現在誘導された心筋細胞群の捕食能を確認している。 また、心筋細胞は細胞のcommunity effectsを利用して細胞塊を形成させ誘導をかける。その後、逆にFACS分別のため単一細胞化させなければいけない。ある意味矛盾した行為を連続して行う必要がある。この過程が不十分であるとFACSを用いて十分な分別が困難になる。心筋細胞の細胞増殖性は幼若期にあるのみで個々での細胞損失は問題となるかる可能性は高い。細胞塊形成-単一細胞分離をスムーズに細胞を損失することなく実験法を組まなければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者に分与した404,628円が残ってしまった。分担研究者と相談の上心房由来線維芽細胞のiPS細胞誘導実験のプロトコールを作成していたが、根本的に皮膚由来線維芽細胞と同様のプロトコールでは誘導が困難であることが判明し、その延長上の実験の進行が遅れてしまったためにこの残金が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
基金分なので、平成27年度にこれを利用してヒトiPS用RNA導入キットを購入し、実験を進行したいと考えている。
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