ヒトiPS細胞には分化能の劣る細胞が混在することが判明しており、このためヒトiPS細胞を高効率に分化誘導かけることは極めて困難である。しかし、易分解性を解除したTET1を用いて誘導をかけると、現行ヒトiPS細胞に比較して圧倒的に高効率で神経前駆体細胞になることが判明した。そこでTET1 恒常的に発現させてヒトiPS細胞の高効率分化誘導を基盤とした研究を継続している。しかし、TET1 恒常的に発現させるシステムを用いても患者由来初代培養間葉系細胞を用いた場合、その誘導効率は極めて悪い。患者皮膚由来線維芽細胞を用いればヒトiPS細胞誘導は何とか可能であるが、患者左心耳より分別培養された心臓由来線維芽細胞からのヒトiPS細胞誘導は、少なくともエピソーマルベクターの遺伝子導入による山中法を用いた場合、全く誘導することが不可能である。加えて最近の論文でも話題となっているが、iPS細胞誘導後にはゲノムに点突然変異や遺伝子コピー変異等が多く発生し、iPS細胞としての品質が安定せず、臨床的に使い物にならない可能性が大きな問題として残されている。平成28年度より、培養液の詳細な変更により極めて低い効率であるが初代培養間葉系細胞よりヒトiPS細胞の誘導に成功した(投稿準備中)が、上記の如く確率論として遺伝子変異が挿入されてしまうため、良質なiPS細胞をコンスタントに確保するには、少なくとも数百から数千個のコロニー取得が望ましいが、すべて患者組織からコンスタントに誘導に成功はしておらず、さらなる改変が必要であり、以下の項目を中心に研究を進めていく。 1)心臓組織から分別培養した線維芽細胞を用いた高効率ヒトiPS細胞法の確立。 2)同一患者の皮膚組織並びに心臓組織から分別された線維芽細胞から誘導されたヒトiPS 細胞エピゲノム評価。 3)心房利尿ペプチド分泌能を高めた心房型心筋細胞の作製
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