研究課題/領域番号 |
26293315
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊達 洋至 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60252962)
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研究分担者 |
陳 豊史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00452334)
小池 薫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10267164)
佐藤 寿彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40388822)
青山 晃博 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60379047)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺移植 / Ex vivo lung perfusion |
研究実績の概要 |
【背景・目的】 肺移植において、reconditioningを目的として Ex vivo lung perfusion (EVLP) が導入されてきたが, 薬剤投与手段としての使用に関する報告は少ない. EVLP 中のプロカテロール投与がグラフト肺に及ぼす影響について移植モデルを用いて検討した. 【方法】 イヌ肺に 150 分温虚血を作成後, EVLP 120 分施行し, EVLP 中のネブライザーによる経気道的介入により 2 群(各n=5)を作成した. control 群: control 溶媒を経気道投与. beta 群:プロカテロール 1400 181g を経気道投与. EVLP 終了後左肺を移植し, 再灌流後 240 分において評価した. EVLP 中と移植後の生理学的データを検討した. 【結果】 EVLP 中の生理学的指標の変化量は, beta 群が有意に compliance 低下の程度が少なく (p < 0.001), 肺血管抵抗上昇の程度が少なかった (p < 0.001) . 移植 240 分後は全例生存していたが beta 群が有意に酸素化能良好 (p < 0.001) , compliance 高値 (p < 0.001) , 肺血管抵抗低値 (p < 0.001) , 乾湿重量比低値 (p < 0.001) と良好な結果であり、副作用としての頻脈は認めず、むしろ control 群で有意に脈拍数が多かった (p < 0.001) . 【結語】 EVLP 中の経気道プロカテロール投与により, 長時間温虚血に起因する臓器障害抑制効果を認めた. また EVLP 中に高用量のプロカテロールを問題なく投与可能であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビーグル犬を使用して心停止ドナー肺を摘出前に換気したり(Sakamoto, Transplantation 2011)、β-2 adrenoreceptor agonist 吸入(Sakamoto, J Heart Lung Transplant 2012)させたりすることによって、肺移植後の肺傷害改善が認められることを報告してきた。そこで、26年ドンから27年度にかけては、心停止ドナーから摘出した肺を体外肺循環(EVLP)し、そのEVLP中にβ-2 adrenoreceptor agonist 吸入を行うことによってドナー肺の傷害を修復しうるかどうかを検討した。EVLP後に左肺移植を行ったところ、EVLP 中の経気道プロカテロール投与により, 長時間温虚血に起因する臓器障害抑制効果を認めた. また EVLP 中に高用量のプロカテロールを問題なく(副作用なく)投与可能であった.
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今後の研究の推進方策 |
我々は、心停止ドナー肺に対するサーファクタント吸入の有用性を、ラット肺灌流モデル(Ohsumi, PLosOne, 2013)および、ビーグル犬肺灌流モデル(Ohsumi, J Heart Lung Transplant 2012)で報告してきた。そこで、心停止ドナーから摘出した肺を体外肺循環EVLPし、そのEVLP中にサーファクタント吸入を行うことによってドナー肺の傷害を修復しうるかどうかを検討するために、平成28年度は、以下の二群の比較実験を行う。EVLP終了後、左片肺移植を行って、吸入療法の効果を検討する。 サーファクタント吸入群 (n = 8) 心停止2時間後に摘出したドナー肺をEVLP回路にて、6時間の還流を行う。この間、ドナー肺に対して、サーファクタント吸入を行う。 コントロール群 (n = 8) 上記と同じ設定で、吸入療法を行わない。
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