研究実績の概要 |
[目的] K-ras 変異陽性の原発性肺腺癌細胞株であるA549 細胞に、特定の因子の導入することにより、癌幹細胞性を有する細胞の誘導を行う。誘導された細胞を用いて、肺腺癌の浸潤部位形成と伸展機序を解明する。 [方法] レトロウイルスベクターを用いて、A549 細胞に体細胞初期化因子(OCT 3/4, SOX2, KLF4)の導入を行い肺癌幹細胞様の細胞(induced Lungcancer stem like cell; iLCSC)を誘導する。そして、元のA549 細胞とiLCSC のSphere 形成能をSphereformation assay により比較する。さらにA549 細胞とiLCSC を、間葉系幹細胞(MSC)、血管内皮細胞(HUVEC)と共に3 次元下で混合培養し、得られたSphere のパラフィン包埋ブロックを作成後、連続切片を作成する。これをHematoxylin eosin(HE)染色や免疫組織化学的手法により、詳細に病理的評価を行う。 [結果] 体細胞初期化因子を導入したA549 細胞において、遺伝子導入後10 日~15 日目に核/細胞質比の高い小型の細胞からなるコロニーを認めた(iLCSC)。iLCSC のSphere 形成能は、もとのA549細胞に比べて著明に高かった。さらにiLCSC を、MSC、HUVEC と共に3 次元下で混合培養することにより、病理学的評価において、肺癌組織構造と類似したオルガノイド(肺癌オルガノイド)を構築した。 [結論] 特定の因子導入によりiLCSC を誘導できると考えられた。またiLCSC を用いることにより、肺癌組織に類似した肺癌オルガノイドを構築することに成功した。
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