研究課題/領域番号 |
26293319
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 竜太 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10400243)
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研究分担者 |
冨永 悌二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00217548)
芳賀 洋一 東北大学, その他の研究科, 教授 (00282096)
荒井 啓行 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (30261613)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薬剤送達 / 中枢神経系 / 脳腫瘍 / アルツハイマー病 / てんかん |
研究実績の概要 |
局所広範囲ドラッグデリバリー技術の安定化に関しては、超音波印加型薬剤投与デバイスの改良を行った。改良を行ったデバイスに関して、薬剤注入安定性、電気的特性、温度特性、薬剤分布容積の安定性などを行い初期のデバイスと比較してより高効率での駆動、デバイス温度上昇の抑制、脳内拡散薬剤分容積の安定など局所広範囲ドラッグデリバリー技術の向上と安定化を図った。現在、改良を行ったデバイスの特許出願準備中である。これで昨年度に実施した従圧式ポンプ開発と合わせて、システム一式の開発が終了したことになる。ただし、デバイス変更により、ポンプに関する最終結論は次年度最初に見送ることとした(下記進捗状況参照)。 また、実用化に向けた開発への準備を進めており、脳腫瘍での治療応用を先行させる方向で準備をしている。デバイスに関して最終的に臨床への使用を考えている事から、医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ相談を行い薬事申請が可能となる条件を満たす構成としていく予定である。 本技術の汎用化に関しては、脊髄疾患への応用に向けた基礎研究を終え論文投稿しており、現在in pressの状況となっている。また、てんかんへの応用研究も終え、論文作成中である。アルツハイマー病に関しては短期間でアミロイドAβタンパクを蓄積するアルツハイマーモデルマウスの系統を安定して使用できる状況となっており、今後候補としてる薬剤の局所投与による治療を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超音波印加型薬剤投与デバイスの改良を行った。現在、特許出願準備中であり、詳細は割愛する(平成28年度最初に出願完了予定)が、より低電圧での駆動が可能となり、一定した薬剤分布が可能となった。昨年度に作成した従圧式ポンプと合わせて、システム一式の開発が終了したことになるが、ポンプに関しては、旧型の超音波印加型薬剤投与デバイスでの投与に際しては薬液注入ルートの閉塞に伴い、圧が上昇し、ポンプが停止するトラブルが判明し、旧型の超音波印加型薬剤投与デバイスを使用する際には従量式ポンプの方が優れるとの結論に達した。しかし、本年行った改良による新型デバイスにおいてはこの注入ルートの閉塞は起こりにくい構造に改善しており(注入ルートをチューブ型から針型へ変更した)、この新型デバイスでどちらのポンプがより有効かの検証を現在すすめている。このシステム全体で局所広範囲ドラッグデリバリー技術の安定化は達成可能と考えている。また、汎用化に関しては脊髄病変への投薬に関して、基礎データ取得を行い、論文報告した。また、てんかんモデルに対する抗てんかん剤の投与の実験を終了し、現在論文作成中である。アルツハイマー病に関しては、モデル動物の繁殖を行ったが、使用できる状態に到達し、今後研究を進める予定である。また、システムの実用化を目指して、PMDA相談を行っており、脳腫瘍を対象とした実用化に向けた研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー病モデルへの投薬 1) アミロイド分解薬剤の選定:アミロイドAβ蛋白の分解に関与する蛋白分解酵素ネプリライシン、bapineuzumab、solanezumab、ponezumabなどのAβを認識する抗体が考えられる。ラット脳内投与実験を実施し、毒性、脳内投与時の薬剤拡散性を評価し最適な薬剤を選定する。2) MRI画像誘導下アミロイド分解薬剤の局所投薬技術の確立:ラット脳内へMRI造影剤とアミロイド分解薬剤の混合投与を行い、MRI撮影しラット脳内での造影剤の分布を画像化する。ラットを安楽死させ、脳切片を作製しアミロイド分解薬剤の脳内分布を免疫組織化学的に検出する。3) アミロイド分解薬剤の局所投薬による疾患モデル動物治療効果の検討:遺伝子改変によるアルツハイマー病モデルマウスとAβ1-40とAlCl3を脳内に局所投与することで作製するアルツハイマー病モデルラットを使用する。小動物に用いる小型のPETによるアミロイドイメージングで非侵襲的にアルツハイマー病モデル動物脳内のアミロイド斑の蓄積を可視化、その部位をtargetとしてCED法を用いた薬剤局所投与を行い治療後に同様なPET検査を実施してアミロイド斑の状態を観察する。 脳腫瘍モデルへの新規作成デバイスの効果検討:抗がん剤(ACNU)投与を行い、その安全性、有効性を評価する。 1) 正常ラット脳へのACNU投与の安全性評価。これまでの研究で、正常ラット脳へは通常1mg/ml濃度まで注入が安全に実施できることを示している。新規作成デバイスにより、超音波を印加した際に、同様の安全性が得られることを確認する。2) 脳腫瘍モデル治療実験。新規デバイスによる脳腫瘍治療効果の検討を行う。ラット脳腫瘍モデルを作成し、ACNU投与による抗腫瘍効果の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では人件費・謝金を計上していたが、現在所属している職員にて問題なく遂行する事が出来たため、来年度さらなる実験拡大するために次年度に持ち越す事とした。また、平成27年度に予定していた成果報告、研究に関する情報収集が業務の都合上で一部実施できなかったため次年度に持ち越す事とした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に予定していた成果報告、研究に関する情報収集が業務の都合上で一部実施できなかったため今年度、国内・国外での成果報告、情報収集を行うための旅費として使用する計画である。
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