研究実績の概要 |
【目的】膠芽腫再発の根幹となるのは放射線化学療法に抵抗性を示すグリオーマ幹細胞と想定されている。我々はグリオーマ幹細胞を標的として、既存薬の適用を指向するドラッグリポジショニング研究を展開している。今回、スクリーニングの結果得られた候補薬剤の検証実験の結果を報告する。 【方法】米国食品医薬品局承認薬剤640種類、生理活性物質480種類、キナーゼ阻害剤80種類、脂肪酸薬68種類、ホスファターゼ阻害剤33種類からなる1,301種類の既存薬剤を使用した。1次スクリーニングとしてグリオーマ幹細胞に対する増殖抑制効果を非接着384穴プレートを用いたWST増殖アッセイにより評価した。2次スクリーニングとしてPubMedや関連Websiteの検索から既報告薬剤および臨床試験済薬剤を除外した。3次スクリーニングとして低濃度候補薬剤によるグリオーマ幹細胞の増殖抑制効果を確認した。絞られた3種類の候補薬剤の中で、分子量が小さく抗精神病薬として使用されているfluspirileneに注目してin vitro, in vivoでの検証実験を行った。3種類のグリオーマ幹細胞株を使用してsphere forming assayによる幹細胞形質阻害効果を、4種類のグリオーマ細胞株を使用して増殖、浸潤アッセイを行った。さらにグリオーマ幹細胞をマウス脳内に移植した膠芽腫モデルに対して治療実験を行った。 【結果】Fluspirileneはグリオーマ幹細胞形質を濃度依存性に阻害し、使用したすべてのグリオーマ細胞株の増殖、浸潤を濃度依存性に抑制した。さらにマウス脳内の膠芽腫の形成、増殖、浸潤を抑制した。 【考察】Fluspirileneはグリオーマ幹細胞及びグリオーマ細胞の両者に対して抗腫瘍効果を有する薬剤であると考えられた。 【結論】1,301種類の既存薬剤の中から抗グリオーマ剤fluspirileneを抽出した。
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