研究課題/領域番号 |
26293323
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
伊達 勲 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70236785)
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研究分担者 |
黒住 和彦 岡山大学, 大学病院, 講師 (20509608)
道上 宏之 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20572499)
近藤 聡彦 独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部), その他部局等, 脳神経外科医師 (20721137)
安原 隆雄 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (50457214)
亀田 雅博 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50586427)
上利 崇 岡山大学, 大学病院, 助教 (60423290)
菱川 朋人 岡山大学, 大学病院, 助教 (60509610)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞移植 / 電気刺激 / パーキンソン病 / 脳梗塞 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究により、細胞移植と電気刺激を組み合わせた研究のセットアップが確立された。平成27年度の最も大きい研究成果としてPLoS One誌掲載にたどりついたものがある (Toyoshima A, et al. PLoS One 2015)。移植経路と移植のタイミングに関する研究であるが、骨髄幹細胞を様々なタイミングで脳梗塞モデルラットに経頚動脈的移植した。脳梗塞モデル作製から24時間後に移植を行った群で脳梗塞体積が最も小さく、行動学的改善率が高かった。骨髄幹細胞から分泌される成長因子や栄養因子と治療効果の関与が示唆された。 パーキンソン病に対する脊髄刺激療法については、モデル作製前からの電気刺激が有効であることを平成26年に報告したが、引き続き、モデル作製後からの電気刺激でも治療効果があるのではないかと、臨床応用を意識して、タイミングをずらした研究を行っている。 また、細胞移植と電気刺激を組み合わせた研究については、骨髄幹細胞を脳梗塞対側大脳皮質に移植し、脳梗塞領域の大脳皮質に電気刺激を行うことにより、移植骨髄幹細胞の脳梗塞への遊走距離が伸長することが明らかとなった。一方で、移植骨髄幹細胞の生存や分化については、今のところ有意な差異が確認されておらず、評価方法を更に検討中である。脳梗塞体積は細胞移植+電気刺激群において、細胞移植+対照群と比べて縮小を示し、結果として行動学的改善を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳梗塞に対する移植治療のタイミングや移植方法の研究については、予定通りのタイミングでデータ解析から論文掲載までスムーズに行うことができた。パーキンソン病に対する電気刺激治療についても、単なる神経保護効果を確認するだけでなく、発症後の治療介入を意識した時間軸での治療につながっている。脳梗塞に対する細胞移植と電気刺激を組み合わせた研究については、セットアップの確立にやや時間がかかったが、いったん方法が確立されてからは、行動学的・組織学的評価が順調に進み、最も明らかにしたかった、移植細胞の遊走距離が電気刺激によりどのような影響を与えるか についてもかなり興味深いデータが得られつつある。今後、シグナリングの重要なキーモレキュールの中和抗体を脳室内投与することにより、電気刺激が移植細胞の遊走に影響を与える際、どの経路が重要かを明らかにするが、1年あれば、かなり高い確率でデータ収集から解析、発表までつなげていけることと考える。一方で、カプセル化細胞移植をうつ病モデル動物に対して行い始めていて、それによる実験データ収集にはまだ時間がかかると予測される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は本研究の最終年度にあたるが、細胞移植+細胞遊走に関与するシグナルの中和抗体の脳室内投与+電気刺激群 vs. 細胞移植+対照物質の脳室内投与+電気刺激群 の研究を行い、電気刺激による細胞遊走のメカニズムを明らかにする。また、電気刺激の治療効果そのものに対する影響を検討するために、行動学的・組織学的評価も行う。また、一方で内在性幹細胞の移動についても検討を追加する。これらの研究成果をまとめ、脳卒中学会、脳神経外科学会、annual meeting of Society for Neuroscience などで報告し、論文投稿に向かう。H.29年度に論文掲載されるように計画する。カプセル化細胞移植については、うつ病モデル動物に対する治療効果を、確立された他の治療との比較により、行動学的・組織学的に検証する。
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