研究課題/領域番号 |
26293325
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中溝 玲 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80529800)
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研究分担者 |
溝口 昌弘 九州大学, 大学病院, 講師 (50380621)
吉本 幸司 九州大学, 大学病院, 講師 (70444784)
天野 敏之 九州大学, 大学病院, 助教 (70448413)
飯原 弘二 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90270727)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / micro RNA / exosome / 悪性脳腫瘍 |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞 (MSC) 由来のexosomal miRNAが,GBM細胞(U87)の浸潤能に与える影響を解明するため,以下の実験を行った. 1) U87の細胞からmiRNAを含むtotal RNAを,MSCの培養液上清からexosomal miRNAを抽出した。網羅的なmiRNAの定量PCR解析を行い,(U87の細胞のmiRNAの⊿Ct) / (MSCのexosomal miRNAの⊿Ct)の比を算出し,比が-3以下かつMSC exosomal miRNAのraw Ctが33以下のものを抽出した.その結果,miR-154-5p,409-3p,127-3p,193a-5p,145-5p,143-3p,196a-5p,31-5pが同定された. 2) 1)で同定したmiRNAをU87 に過剰発現させ,transwell invasion assayを行った.その結果,miR-127-3p,145-5p,31-5pの過剰発現によって,浸潤能が有意に抑制された. 3) 2)で同定されたmiRNAをそれぞれ組み合わせてU87に過剰発現させ,transwell invasion assayを行った.その結果,hsa-miR-127-3p,145-5p,31-5pそれぞれを単独で過剰発現させた場合と同様に,miR-127-3p+145-5p,miR-127-3p+145-5p,miR-145-5p+31-5p,miR-127-3p+145-5p+31-5pの全ての組み合わせにおいて浸潤能が有意に抑制された. 4) MSCに過剰に発現されたmiRNAが,MSCが本来有するGBM指向性へ影響を与えるかを検証するため,3)と同様の組み合わせでmiRNAをMSCに過剰発現させ, transwell invasion assayを行った.この際,下のwellには,U87から得られたconditioned medium (serum free)を用いた.その結果,miR-127-3p,miR-127-3p+145-5p,miR-127-3p+145-5pの過剰発現によって,MSCのU87に対する遊走能が亢進することが明らかとなった.一方,miR-31-5p,miR-127-3p+145-5p+31-5pの過剰発現において,MSCの浸潤能が抑制されることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
U87細胞内において発現の程度が低く,かつ、MSC由来のexosomal miRNAにおいて発現が亢進しているmiRNAのうち,hsa-miR-127-3p,145-5p,31-5pをU87に過剰発現させることにより,U87の浸潤能が抑制されることが明らかとなった.また,上記3つのmiRNAを複数組み合わせても,U87の浸潤能は依然として抑制されていた.逆に,MSCにmiR-127-3p,miR-127-3p+145-5p,miR-127-3p+145-5pを過剰発現させ,U87のconditioned mediumをlower wellに用いたinvasion assayを行った結果,MSCのU87に対する遊走能は亢進することが明らかとされた.これらの結果は,miR-127-3p,miR-127-3p+145-5p,miR-127-3p+145-5pを過剰発現させると,MSCが本来有するGBM指向性を更に亢進させ,かつMSCから分泌されるexosomal miRNA-127-3pがGBMの浸潤能を抑制させる可能性を有している. 以上の結果より,研究は概ね順調に進展しているものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
miR-127-3p,145-5p,31-5p及びそれぞれを組み合わせて過剰発現させたMSCから分泌されたexosomeを含むconditioned mediumによるU87の浸潤抑制効果をtranswell invasion assayを用いて検証する.また,Cy3で標識されたmiRNA-mimicを用いMSCにmiR-127-3p,145-5p,31-5pを過剰発現させ,MSCから分泌されたCy3で標識されたexosomal miRNAが実際にU87内へ取り込まれることで証明する. これらが証明されれば,ex vivoにおいて長期間の観察が可能であるorganotypic culture methodを行う.具体的には,nude mouseから脳を摘出し,virotomeを用いてbrain sliceを作製し, Green fluorescent protein(GFP)で標識したU87と当該miRNA強発現MSCを大脳基底核(被殻)に作製したpinhole内にimplantする.U87の浸潤を蛍光顕微鏡で観察し, miRNA-127-3p強発現MSCによる浸潤抑制効果を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加のための旅費が,当初予想していたより安い金額で収まったため.
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次年度使用額の使用計画 |
transwell invasion assayなどの消耗品費として使用する.
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