研究課題/領域番号 |
26293326
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
新井 一 順天堂大学, 医学部, 教授 (70167229)
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研究分担者 |
中島 円 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50317450)
宮嶋 雅一 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60200177)
菅野 秀宣 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90265992)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知症 / 動物モデル / 正常圧水頭症 / パッチクランプ / 長期増強現象 / LRG1 |
研究実績の概要 |
高齢者認知症疾患に関連するLeucine-rich alpha-2-glycoprotein1 (LRG1)コンディショニングマウスを用いた認知機能を多角的に検討した。LRG1は、加齢や脳内の炎症により増加する蛋白であり、大脳皮質Neuron・Glia細胞のみならず髄液中にも発現し、LRG1の発現は退行変性疾患、特に正常圧水頭症や進行性核上性麻痺、びまん性レビー小体型認知症で有意に増加する。我々はLRG1の中枢神経系での機能を解析すべく、LRG1が中枢神経系に特異的に過剰発現するdouble transgenic mouse を作製し、加齢に伴うLRG1発現の変化とそれに伴う認知機能の変化を1.形態学的、2.神経生理学的、3.行動生理学的に解析した。LRG1過剰発現モデル(Tg群)と対象モデル(ctrl群)を比較し、KB染色でNeuron数や密度および層構造に明らかな差は認められず、map2染色でctrl群では軸索が長く密に存在するのに対し、Tg群では短く粗で、軸索など細胞間のコミュニケーションに障害があると推察された。pCREBは学習により発現する蛋白であるが、24週、48週齢マウスで記憶形成・保持のタスクを行った後、ctrl群では学習効果を示してリン酸化CREBの発現が認められたのに対し、Tg群では発現が減弱し、学習効果が低いことが明らかとなった。神経生理学的評価として、海馬CA3からCA1に投射するSchaffer側枝にて神経刺激により発生する興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を記録するパッチクランプを行ない,fEPSPはTg群で有意に小さくシナプス伝達が減弱しており、長期増強現象(long-term potentiation, LTP)においても時間経過に伴う低下を認めた。行動実験で老齢Tg群に記憶機能に関し有意な低下を認め、加齢に伴い認知機能低下が顕性化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は高齢者認知症疾患に関連した臨床研究と動物モデルを用いた基礎研究とのトランスレーショナルリサーチであるが、基礎研究に関しては研究計画に基づいた実験成果が得られており、認知症モデルマウスとしてLeucine-rich alpha-2-glycoprotein1 (LRG1)コンディショニングマウスの作成が安定して得られ、その成果を報告する論文作成に着手できる実験データが得られつつある。臨床研究に関しては、認知症を伴う高齢者の髄液中の蛋白,遺伝子に対する研究アプローチを行なっており,多施設協同研究による特発性正常圧水頭症髄液診断バイオマーカーの開発が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画に基づき、研究を継続していくが、基礎研究をサポートする技術研究員を海外より受け入れ一人配置する予定であり,本研究費から人件費を捻出していく計画である。
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