研究課題
高齢者特有の疾患として知られる特発性正常圧水頭症(iNPH)の病態の解明及び的確な髄液診断に対する研究を継続した。診断法では患者の髄液中各種アミロイドβペプチド、リン酸化タウ蛋白のほか、筆者らが脳内で加齢によって増加することを発見した糖蛋白ーleucine-rich alpha-2 glycoprotein (LRG1)などの髄液バイオマーカーを測定し、また新たにAβ42凝集体においてGlu22、Asp23残基付近でのターン構造(毒性ターン)を特徴とする「毒性コンホマー」24B3をサンドイッチELISAで測定し発症時期、アルツハイマー病などの併存疾患、髄液シャント効果を解析し、有用であった。基礎研究では高齢者認知症疾患に関連した臨床研究とモデルマウスを用いたトランスレーショナルリサーチを継続し、中枢神経系にLRG1を特異的に過剰発現させるdouble transgenic (Tg) マウスを作成し、電気生理学的に海馬スライスを用いてパッチクランプ法によるpaired pulse facilitation(PPF)や長期増強: long-term potentiation (LTP)などのシナプス可塑性について解析した結果、LRG1-Tg マウスで24wからPPF、LTPが有意に低下し、LTP形成のための刺激閾値が上昇していた。認知行動実験にて24週齢ではシナプス機能の代償が働き有意差は生じなかったが、加齢に伴い48週齢は短期記憶および空間記憶が障害されることを確認した。病理組織学的には、LRG1-Tgマウスでsynaptophysinの免疫反応が有意な低下を認め、電子顕微鏡下にシナプス小胞とシナプス接合部の減少を確認した。LRG1はsynaptophysinと結合しシナプスの量的減少を惹起し、記憶形成を障害している可能性が推察された。研究内容は論文化し現在投稿中である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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