研究課題
まず複数のhiPS細胞株を用いてサイトカインによる基礎検討を行った。初期胚からの中胚葉分化過程をWnt, BMP, FGFシグナルによって誘導し、その組み合わせとタイミングをスクリーニングした。さらに後半の軟骨分化過程をGDF5、FGF、インスリンシグナルを中心にその組み合わせとタイミングを検討を行った。その結果、Wnt3a、BMP4、FGF2、GDF5、インスリンを2週間にわたって順に使用することで良好な軟骨細胞マーカーの上昇を得ることに成功した。さらにこの分化した細胞がどの程度の軟骨組織形成能を有するかを確認するため、内径3mmのモールドに入れてディスクを形成し、それを免疫不全マウスの膝関節軟骨の大腿骨溝に作成した1mm径の欠損孔に移植した。8週間の経過で、iPS細胞由来軟骨細胞はサフラニンO強陽性の軟骨組織を形成したが、正常軟骨組織との境界には脱分化した組織が観察された。移植後8週間では腫瘍化は観察されなかったが、移植後16週間まで観察すると、6.7%の確率で腫瘍が発生した。組織学的に観察すると、腫瘍組織には外胚葉、中胚葉、内胚葉由来の組織が混在しており、テラトーマであることが判明した。このことから、未分化な細胞が残存したことが原因と考えられた。また2014年度は、サイトカインではなく化合物だけでiPS細胞から軟骨細胞を誘導するための基礎検討も開始した。中胚葉分化については1-2種類の化合物で良好な結果を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
サイトカインによる分化誘導については成績をまとめて現在投稿中である。化合物による分化誘導についても良好な成績を得つつあり、当初の計画以上の進展と考える。
中胚葉分化誘導能、軟骨細胞分化誘導能を有する遺伝子や化合物のスクリーニングを行う。またこれらの作業と合わせ、これまでに絞り込んだ化合物によるiPS細胞からの軟骨細胞分化誘導法の最適化も平行して進める。分化誘導の評価は発現遺伝子のリアルタイムRT-PCR法、フローサイトメトリーで行い、さらに移植実験によって軟骨組織形成能、腫瘍形成のリスクについても検討し、将来の臨床応用の可能性を評価していく。
サイトカインによる分化誘導について、当初の計画よりスムーズに進んだため、次年度以降の使用額に充当することができた。
ips細胞からの軟骨細胞分化誘導法に使用する試薬、消耗品
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 謝辞記載あり 12件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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