研究課題/領域番号 |
26293331
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村木 重之 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40401070)
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研究分担者 |
吉村 典子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60240355)
阿久根 徹 国立障害者リハビリテーションセンター, 病院(併任研究所), 副院長 (60282662)
岡 敬之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60401064)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コホート / 医療・福祉 / 老化 / 疫学 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
我々は2008年から2010年にかけてすでに、東京都板橋区、和歌山県日高川町および同県太地町の40歳以上の一般住民を抽出し、研究への同意が得られたものを参加者として登録しており、合計3,040例(平均年齢73.6歳)の登録が済んでいる。各コホートとも、住民票よりランダムに抽出した地域住民対象の住民検診を運動器疫学調査へと拡大し再設定したものであり、地域代表性は確立されている。昨年度は、対象者の膝、腰椎、股関節レントゲン写真に対し、われわれが開発したOA自動定量システムを適用する事により、膝、腰椎、股関節のOA定量値および筋力、筋量の基準値を確立した。本年度は、膝、腰椎、股関節の定量値と各部位の痛みとの関連について解析した。その結果、膝に関しては、最小関節裂隙幅(mJSW)が1mm未満の場合、4mm以上と比べて膝痛のオッズ比は、男性で39.4(95%信頼区間 11.6-151.8)、女性で12.3 (5.0-35.3)であった。膝痛に対する閾値を、ROC curve analysisにて解析したところ、男性では2.9mm (sensitivity 0.67, specificity 0.65, AUC 0.70)、女性では2.0mm(sensitivity 0.43, specificity 0.69, AUC 0.69)であり、男性ではmJSW=3mm, 女性ではmJSW=2mmが、膝OAの新たな診断基準値として推奨されることが明らかとなった。一方、腰椎に関しては、男性ではL1/2-L5/Sのすべての椎間の狭小化が腰痛と有意な相関を示していたが(p<0.05)、女性ではL3/4, 4/5のみが有意な相関を示していた。一方、骨棘形成と腰痛と有意な関連は男女とも認められなかった。股関節では、関節裂隙狭小化、CE角の減少が、特に女性において有意な相関を示していた(p<0.05)。さらに、追跡調査は現在進行中であり、本年度中に完了する見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに膝、腰椎、股関節のOA定量値と痛みとの関連について確立できたとともに、追跡調査も順調に進んでおり、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ベースライン調査データを解析することにより、日英における膝、腰椎、股関節のOA定量値および筋力、筋量と運動機能障害との関連を明らかにしていく。ただし、横断研究では、関連は明らかにできても、その因果関係までは明らかにできない。我々は、既に追跡調査を開始しており、H28年度中には完了する予定である。調査項目は、ベースライン調査と同様であり、両膝、腰椎、慮股関節レントゲン撮影、200項目以上のアンケート調査、医師による臨床情報、上下肢筋力、筋量検査、運動機能検査などの多岐にわたっている。さらに、英国The Heartfordshire Studyも、追跡調査を行っており、H28年度中には完了する予定である。ベースラインおよび追跡調査による縦断データにおり、OA及び筋肉定量値による、運動機能障害の危険因子の解明、予測指標および効果的な予防対策の確立が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、追跡調査を行っており、それに使う物品費に792474円を計上していたが、ベースライン調査の際に使用した物品がまだ使用可能であったため、そちらを用いることができたため、物品費を低く抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度も引き続き追跡調査を行うが、新調しなくてはならない物品もあるため、そちらに使用する予定である。
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