研究実績の概要 |
我々は2008年から2010年にかけてすでに、東京都板橋区、和歌山県日高川町および同県太地町の40歳以上の一般住民を抽出し、研究への同意が得られたものを参加者として登録しており、合計3,040例(平均年齢73.6歳)の登録が済んでいる。各コホートとも、住民票よりランダムに抽出した地域住民対象の住民検診を運動器疫学調査へと拡大し再設定したものであり、地域代表性は確立されている。これまでに、対象者の膝、腰椎、股関節レントゲン写真に対し、われわれが開発したOA自動定量システムを適用する事により、膝、腰椎、股関節のOA定量値および筋力、筋量の基準値、痛みや運動機能との関連を確立するとともに、追跡調査もすでに終了している。本年度は、追跡調査のデータを用いることにより、圧迫骨折の有病率及び股関節OAの発生率を解明した。圧迫骨折の有病率は男性で 40歳未満 17.4, 40歳 7.9, 50歳 18.5, 60歳 25.6, 70歳 26.3, and 80歳 41.5%,、女性で 40歳未満 2,9, 40歳 2.4, 50歳 7.3, 60歳 10.3, 70歳 27.1, and 80歳 53.0%であった。軽度な圧迫骨折は男性(21.2%)のほうが女性 (10.0%)より多かったが(p < 0.001)、重度の圧迫骨折は男性(4.7%)より女性(9.1%) のほうが有意に多かった(p = 0.003)。重度の圧迫骨折は腰痛及び歩行能力の低下に有意な影響を与えていたが、軽度の圧迫骨折は有意な影響はなかった。一方、股関節OAの発生率は、男性で5.6/1,000 人年、女性で8.4/1,000 人年であった。 股関節OAの進行率は、男性では2.2/1,000 人年、女性では6.0/1,000 人年であった。股関節OAの危険因子は、年齢、肥満、寛骨臼形成不全 (hazard risk [HR] 1.05, 95% confidence interval [CI] 1.03-1.08;1.78, 1.10-2.75; 2.06, 1.30-3.17)であった。股関節OA進行の危険因子は、 股関節痛と寛骨臼形成不全(HR 5.68, 95%CI 1.07-22.61; 14.78, 3.66-56.06)であった。.
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