研究課題/領域番号 |
26293342
|
研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
川井 章 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (90252965)
|
研究分担者 |
近藤 格 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30284061)
落谷 孝広 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (60192530)
市川 仁 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30201924)
吉田 朗彦 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (80574780)
細野 亜古 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 医長 (00602947)
小倉 浩一 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, がん専門修練医 (20583115)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 悪性骨軟部腫瘍 / 肉腫 / 軟骨肉腫 / 骨肉腫 / 胞巣状軟部肉腫 / 全ゲノム解析 / 全トランスクリプトーム解析 / microRNA |
研究実績の概要 |
本研究は、稀でありながら多彩な生物学的特徴を有する悪性骨軟部腫瘍(肉腫)の分子生物学的異常を遺伝子からタンパク質まで重層的に解析し、臨床上重要な表現型に関与する因子を明らかにすること、それによって各腫瘍の分子背景に基づく治療法の選択、特異的な分子生物学的異常を標的とした新たな治療法の開発を促進することを目的としている。 平成26年度は、軟骨肉腫、骨肉腫、胞巣状軟部肉腫の3種類の肉腫に関して研究を進めた。 1.10例の軟骨肉腫凍結検体ならびに同一患者の正常リンパ球よりDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて、全ゲノム解読並びに全トランスクリプトーム解読を行い、体細胞ゲノム異常の包括的な同定を行った。さらに47例の軟骨肉腫を追加して検証実験を行った結果、約20%の症例で軟骨細胞の分化に重要な働きをしている細胞外基質であるCOL2A1遺伝子に高頻度なゲノム異常を同定した。また、新たにアクチビン受容体を含む融合遺伝子(FN1-ACVR2A)を発見した。さらに軟骨肉腫における体細胞変異の分布を他の固形がんと比較した結果、紫外線による悪性黒色腫や喫煙による肺がんとは異なった分布を示し、前立腺がんと強い相似性を示すことが明らかとなった。 2.ヒト骨肉腫細胞株におけるがん幹細胞分画を単離し、その悪性形質に関与するmicroRNAとしてmiR-133aを同定した。さらにlocked nucleic acid (LNA)によるmiR-133a機能阻害によって、薬剤耐性や浸潤能などの悪性形質がin vitro, in vivoにおいて抑制されることを見出した。 3.胞巣状軟部肉腫で特異的に発現が亢進しているタンパク質を網羅的タンパク質発現解析の手法を用いて解析し、SETタンパク質が胞巣状軟部肉腫で高発現していること、同タンパク質の発現抑制によって細胞増殖や浸潤能などが抑制されることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、3年計画の初年度である平成26年度は、悪性骨軟部腫瘍の治療選択・層別化のためのバイオマーカー探索を主として行い、次いで平成27年度に腫瘍特異的な分子生物学的異常を標的とした新たな治療法の探索を行うことを計画していた。研究の結果、平成26年度に見出した腫瘍特異的な分子生物学的異常の中のいくつかのものは、バイオマーカーとしてよりも骨軟部腫瘍に対する新たな治療標的となりうることが想定され(軟骨肉腫における新規融合遺伝子FN1-ACVR2A、骨肉腫におけるmiR-133a、胞巣状軟部肉腫におけるSETタンパク質など)、実際にその阻害によって抗腫瘍効果が認められた(骨肉腫におけるmiR-133a、胞巣状軟部肉腫におけるSETタンパク質)。その点で、当初の計画とは少し異なっているが、2年次の目標の一部を先取りして達成したとも考えられ、おおむね順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、26年度に引き続いて、バイオマーカーに関する研究を進めるとともに、悪性骨軟部腫瘍特異的な分子生物学的異常を標的とした新たな治療法の探索を行う。初年度に引き続いて、国立がん研究センター中央病院と国立がん研究センター研究所が協力して研究を行う。臨床データの収集、解析、病理学的検討および研究のとりまとめは中央病院の研究分担者および研究代表者が実施する。遺伝子及びタンパク質の発現解析、in vitro, in vivoの前臨床研究、ゼノグラフト作成は研究所の研究分担者が行う。 化学療法抵抗性となった再発骨肉腫、脂肪肉腫、従来の抗がん剤が無効な胞巣状軟部肉腫、類上皮肉腫など難治性悪性骨軟部腫瘍において、新たな治療標的となりうる分子を同定し、in vitro, in vivoモデルを用いた前臨床研究によって新規治療の有効性を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
0
|
次年度使用額の使用計画 |
0
|