研究課題
本年度は、オプトジェネティクスや DREADD システムといった特定神経細胞活性制御技術を確立し、その応用により、鎮痛効果発現に関わる神経回路網の解析を行った。in vivo microdialysis 法を用いて、モルヒネ処置下、腹側被蓋野 (VTA) 領域への光照射あるいは CNO 投与による、側坐核におけるドパミン遊離量を測定した。その結果、TH-eNpHR マウスの腹側被蓋野領域へ 589nm の黄色光を照射することにより、モルヒネ誘発ドパミン遊離量増加の抑制が認められた。同様に、ドパミン神経の起始核である腹側被蓋野に特異的に hM4Di を発現させた VTA-TH-Cre/hM4Di マウスへの CNO 処置により、モルヒネ誘発ドパミン遊離量増加の抑制が認められた。こうした条件下、腹側被蓋野ドパミン神経細胞の抑制によるモルヒネ鎮痛効果への影響を検討した。その結果、TH-eNpHR マウスの腹側被蓋野領域への光照射により、モルヒネ鎮痛効果の有意な減弱が認められた。同様に、VTA-TH-Cre/hM4Di マウスへの CNO 処置により、モルヒネ鎮痛効果の有意な減弱が認められた。続いて、経路選択的なモルヒネ鎮痛効果に対する影響を検討する目的で、イムノトキシン細胞標的法を応用し、腹側被蓋野-側坐核経路もしくは腹側被蓋野-帯状回経路特異的な神経細胞除去を行った。その結果、腹側被蓋野-側坐核経路の神経を脱落させたイムノトキシン群においてのみ、モルヒネの抗侵害効果に有意な減弱が認められた。
2: おおむね順調に進展している
本申請に必要なマイクロインジェクション等の技術習得ならびに遺伝子改変動物やAAV ベクター等のマテリアルの入手が比較的速やかに達成することができたため、チロシンハイドロキシラーゼ (TH) promoter 下流に光受容性チャネルであるChR2 あるいはeNpHR や DREADD サブタイプである hM3Dq ならびに hM4Di を特異的に発現させることが可能となった。こうした技術を駆使し、中脳ドパミン神経を活性化あるいは抑制することによる疼痛や不安といった表現系に対するフェノミクス解析の実施が可能となった。
今後は、慢性疼痛モデルや恐怖条件付けモデル等を用いて、疼痛や負の記憶に対するドパミン神経系を中心とした脳内ネットワークの関与について検討を行う。また、申請書に従い、快楽ネットワークの後生的遺伝子修飾 (エピジェネティクス修飾)と痛み発現の時間的相関解析や因果解析を行う目的で、中脳辺縁ドパミン神経の投射先である側坐核における miRNA の発現変動ならびに機能解析を進めていく。
学術研究助成基金助成金受入の初年度であるため、物品調達の残額 (端数) を次年度に繰り越した。
次年度以降の物品費として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 オープンアクセス 14件、 謝辞記載あり 14件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (2件)
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