研究課題/領域番号 |
26293350
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
並木 幹夫 金沢大学, 医学系, 教授 (70155985)
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研究分担者 |
溝上 敦 金沢大学, 医学系, 准教授 (50248580)
泉 浩二 金沢大学, 医学系, 特任助教 (80646787)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 微小環境 / アンドロゲン感受性前立腺癌細胞 / アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞 |
研究実績の概要 |
癌組織の微小環境研究するとき、しばしば、癌細胞と間質細胞との相互作用を研究することが多い。我々は、その相互作用だけでなく、癌細胞間の相互作用、つまり、混在しているアンドロゲン感受性前立腺癌細胞と、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞との相互作用により、前立腺癌の増殖や浸潤能が変化しているという仮説のもとに研究を行った。 アンドロゲン感受性前立腺癌細胞LNCaPをアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞DU145、PC-3細胞と共培養し、増殖の変化を観察した。PC-3細胞はアンドロゲンの有無にかかわらず、LNCaP細胞の増殖を促進しなかった。しかし、DU145細胞は副腎性アンドロゲンDHEA存在下でLNCaPの増殖を促進した。さらにDU145細胞はLNCaP細胞内のandrogen receptor(AR)のDHEA応答性も亢進させた。この機序には少なくともDU145細胞においてDHEAをtestosteroneに代謝する能力、つまり3β-HSDや17β-HSD活性が亢進していることがLC-MS/MSで明らかとなった。さらにDU145細胞はDHTによるLNCaP増殖促進やARの活性化も亢進させた。この機序にはDU145細胞からのサイトカインがARの核内移行を促進させていることが考えられた。 また遊走能に関してはWound healing assayにて測定した。LNCaPはDU145の遊走能を阻害したのに対して、LNCaPはPC-3の遊走能を亢進させた。 以上の結果より、アンドロゲン感受性前立腺癌細胞と非依存性前立腺癌細胞は相互作用を引き起こしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンドロゲン感受性前立腺癌細胞とアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞のクロストークを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
アンドロゲン感受性前立腺癌細胞とアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞のクロストークがどのような機序で成り立っているのかを明らかにする必要がある。癌細胞の培養液中に存在しているタンパク質の同定をサイトカインアレイを行い、数十種類のサイトカインを調査し、各種細胞株で発現の異なるサイトカインを明らかにする。さらに発現の異なるサイトカインを中和抗体で阻害したり、サイトカインを添加するなどして、共培養の結果と一致するかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンドロゲン感受性前立腺癌細胞とアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞のクロストークを順調に確認できたことで、実験消耗品類を次年度に使うことができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
in vitroでの培養細胞の維持、管理、試薬等に研究費を継続して使用する予定である。 また、サイトカインアレイを行うための試薬、メンブレン、中和抗体等を購入する予定である。
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