研究課題
膀胱癌を始めとする尿路上皮癌に対する標準的薬物療法にはGC療法とMVAC療法の2つのシスプラチンベースのレジメンしかないため、その不応例に対する治療法の開発が緊急の課題である。その1つの試みとしてHLA-A2あるいはA24拘束性の細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導するペプチドワクチン療法が臨床研究に供されているが、強力なCTLを誘導するにはHLA classⅡ拘束性のCD4陽性ヘルパーT細胞(特にTh1細胞)の誘導が極めて重要である。本研究では、膀胱癌で発現の高いCDCA1, KIF20Aの2つの抗原ついて、1) CD8+CTLおよびCD4+Th1細胞の両方が認識するHLA拘束性抗原ペプチドを同定する、2) 当該抗原の遺伝子を強制発現させた、ヒトiPS細胞より分化誘導した樹状細胞を用いた細胞免疫療法の開発を試みるという2つの大きな研究を立案したが、H27年度もがん抗原CDCA1とKIF20Aについて、最新のHLAクラスII結合ペプチド推定アルゴリズムを利用して合成したペプチドも利用して、CTL エピトープを内包するTh1細胞エピトープを新たに複数個同定した。その結果、それらのTh1細胞エピトープペプチドを用いて、実際の進行膀胱癌患者検体(末梢血)より抗原特異的Th細胞が検出されるかどうかの検討が既に始まっており、CD8+CTLおよびCD4+Th1細胞の両方が認識するHLA拘束性抗原ペプチドの同定に進みつつある。また、同一患者において化学療法前、1コース後、2コース後、3コース後とタイミングを変えて反応性を検討している。
3: やや遅れている
我々はこれまでに膀胱癌で発現が高く、CTLエピトープペプチドが、がん免疫療法の臨床研究で奏効を示している、がん抗原CDCA1とKIF20Aについて、最新のHLAクラスII結合ペプチド推定アルゴリズムを利用して合成したペプチドも利用して、CTL エピトープを内包するTh1細胞エピトープを、数種類同定したことを報告しているが、H27年度は実際の膀胱癌患者の末梢血を用いた試験を行うことができたが、ELLISPOT assay の条件を揃えるのに難渋してやや進捗が遅れている。
H28年度はこれまで同定してきたがん抗原CDCA1とKIF20AについてのTh1細胞エピトープペプチドを用いて、実際の進行膀胱癌患者検体(末梢血)より抗原特異的Th細胞が検出されるかどうかの検討をさらに加速させる。またこれらのTh1細胞エピトープから樹状細胞によるcross-presentationにより、CTLエピトープが産生されCTLを活性化できるか否か検討する。さらにペプチド特異的なCTLとTh1細胞のin vitroにおける抗腫瘍免疫発現に関する強調作用、ヒト・リンパ球とヒトがん細胞を移植した免疫不全マウスを用いたin vivo抗腫瘍免疫解析系において、がん抗原特異的CTLとTh1細胞の併用による抗腫瘍効果について検討する予定である。また、我々はヒトiPS細胞から樹状細胞(iPS-DC)を分化誘導する方法を確立しているので、上記のがん抗原および免疫応答増強分子の遺伝子を強制発現させたiPS-DCを樹立して、in vitroにおける当該がん抗原特異的ヒトT細胞への抗原提示能、あるいはヒト免疫細胞を移入した免疫不全 (NOD-SCIDあるいはNOG) マウスのin vivoにおける抗原提示およびT細胞感作能力を検証する予定である。
試薬(抗体、ペプチドなど)や実験動物の購入費が予想より下回ったため。
次年度は最終年度であり、国際学会での発表のための旅費や論文校正費などに使う予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件)
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10.1158/1078-0432.CCR-15-1265.
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