研究課題/領域番号 |
26293355
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
日下 守 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (40309141)
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研究分担者 |
山田 和彦 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40241103)
佐原 寿史 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90452333)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 移植 再生医療 / 腎移植 / マージナルドナー / 臓器保護 / 前臨床実験 / ミニブタ / 一酸化炭素 / HMGB1 |
研究実績の概要 |
炎症前駆物質の活性化が組織傷害を惹起するマージナルドナー腎に対し、種々の細胞保護効果を有する一酸化炭素(CO)、HMGB1、補体活性抑制因子、mTOR阻害剤に焦点を当て、詳細な免疫反応評価が可能な組織適合性抗原MHC確立ミニブタを用いた前臨床実験によって、ドナー、レシピエント、グラフト持続灌流保存中への薬物投与による臓器保護・修復効果を検討し、マージナルドナー臓器を生体臓器に匹敵しうる状態に修復・回復する戦略の確立をはかる。 平成27年度は、1)脳死ドナーに対するCO投与効果の評価、2)腎臓持続体外灌流保存法の確立に焦点をあてた研究を行った。脳死ドナーへのCO投与効果の評価としては、脳死後6時間を経た腎臓を用いてMHC完全不適合間腎移植を行うモデルを用いた。脳死後3時間を経たドナーに対し3時間CO吸入(血中COHb濃度は15-20%に維持)を行った移植症例では、CO吸入を行わない移植症例と比べ、術後早期のクレアチニン値の比較において明らかな改善を認めなかった。我々が行った同様の条件での肺移植実験では、このCO投与方法により有意な移植肺生着延長効果が見られたことと相反する結果であった。臓器間での効果の相違という結果から、肺移植に比べ腎移植では脳死後6時間での臓器内炎症性サイトカイン発現が低値でありCOによる有効な抗炎症効果が働かなかった可能性、腎臓と肺での抗原提示細胞数の違い、臓器間での有効なCO投与法や投与量が異なる可能性など、本モデルでは有効な効果が得られなかったことに対する考察点が挙げられ、次年度の研究進展への道筋を得た。さらにPCPS装置を用い、至適灌流液、血液含有量、流量を中心にした腎臓持続体外灌流保存法の確立を、既報の論文に準ずる方法により確立しており、現在この灌流装置中にCOを付加することによって、脳死ドナー腎移植モデルでのCO投与効果を明らかにする研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、6時間の脳死ドナーに対する3時間のCO投与では、術後の移植腎機能障害を十分には抑制しえないという結果が得られた。これまでに我々が行った肺移植実験とは異なる結果であり、この臓器間の効果相違という観点から、COの作用機序に基づく様々な研究の改良・発展ポイントを挙げることができている。また、平成27年度に確立した腎臓持続体外灌流保存法を用いて、直接COを臓器に投与することの有効性検証とあわせ、平成28年にはマージナルドナーに対する新しい細胞・臓器保護戦略の確立を期待しうることから、総合的にはおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の実験に基づき、ドナー個体への有効なCO投与法や投与量の改良によってCO投与効果が得られるかについて評価を行う。またグラフト腎臓持続灌流保存中への薬物投与を確認するための灌流条件を設定することができたことより、持続灌流中のCO投与が移植腎へ及ぼす影響を明らかにする。これらの検討では、CO投与が移植腎の生着延長に及ぼす効果を最たる評価項目とし、あわせて詳細な作用機序(病理評価/移植腎検体の分子生物学的解析/T・B細胞応答性の血液学的解析)を含めて解明する。さらに脳死ドナーでの検討を終えた後に、心停止ドナーに対するCO投与効果(心停止ドナー腎に対し持続灌流中にCO投与)を評価する。更に、心停止ドナーを用いた実験においては、COだけでなく、H26年度にその有効性を示した抗HMGB1抗体投与、あるいは補体活性抑制因子やmTOR阻害剤による効果増強効果を検証することによって、マージナルドナー腎に対する新しい細胞・臓器保護法に基づく臓器修復戦略を確立する
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗状態で新たに購入予定であった消耗物品の発注が、会計年度末に重なり滞ってしまった為
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に繰り越し、消耗物品の購入と研究進捗の予定
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