研究課題/領域番号 |
26293357
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川名 敬 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60311627)
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研究分担者 |
立川 愛 国立感染症研究所, エイズ研究センター第二室, 室長 (10396880)
金子 新 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (40361331)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子宮頸癌 / iPS技術 / 免疫療法 / T-iPS細胞 / リザーブ細胞 / 癌幹細胞 |
研究実績の概要 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)の癌蛋白質E7は、子宮頸癌・その前癌病変において恒常的に発現していることから、これを癌抗原として認識する免疫学的排除を目指した治療法の開発が期待される。E7特異的細胞傷害性T細胞(CTL)のT-iPS化を目指し、T-iPSの再分化過程において抗原特異性を維持するための検討を本研究で行ってきた。昨年度までにRAG2遺伝子をノックアウトしたT-iPSがiPS化以前の抗原特異性を維持できることを確認した。すなわち癌抗原特異的CTLから作製したT-iPSを再分化過程のdouble-negative T細胞の段階でRAG2-KOの遺伝子改変を行い、その後のα鎖再構成でも、元来の抗原特異的TCRが発現しており、その後42日間の培養において抗原特異性が維持された。そこで、38日目からの抗原特異的CD8+T-iPSを非特異的刺激によって、大量生産を行うことに成功した。現在、これをマウスモデルに輸注することで、そのin vivoでの抗腫瘍効果を検討している。ここまでの検討は、ヒト癌患者の末梢血から癌抗原(GPC3)特異的CTLを樹立したものを用いてきた。子宮頸癌患者におけるE7特異的CTLの樹立が難航しており、来年度にE7特異的CTLのRAG2-KO T-iPSの作製を予定している。 一方、子宮頸癌の発生母地である子宮頸部上皮内のリザーブ細胞をiPS細胞から樹立してきた。中間中胚葉からの培地条件を最適化して、p63+, CK8+, CK5+, CA125+, ER-, PR-の細胞を作製し、これをiRCとした。iRCにHPV16、18型のE6/E7を遺伝子導入し、stable cell lineを樹立した。これは子宮頸癌の癌幹細胞モデルと考えられる。これをヌードマウスへ接種し、癌の分化、悪性度を検討する予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T-iPS細胞を用いたCD8+エフェクター細胞の大量生産が可能となったことは大きな進展であった。一方、子宮頸癌に特化した癌抗原特異的なエフェクター細胞を作製する準備に入っていくが、E7特異的CTLの樹立として、HLA拘束性が問題となっている。HLA-A0201のE7を認識するCTLエピトープは知られてることから、HLA-A0201の子宮頸癌患者からの末梢血サンプリングを実施し、立川分担者によってクローンを行う必要がある。 iPS細胞からの子宮頸癌癌幹細胞モデルは、順調にiRC細胞由来のHPV発癌細胞が増えている。これをクローン化することで多能性も検討している。あとはヌードマウスへの接種で表現型を見るだけであるので、順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
川名は、子宮頸癌患者のHLAアレルタイプを調べ、HLA-A0201症例の末梢血からHPV16 E7特異的CTLを抽出する。立川分担者がこれをクローン化する。E7を認識するTCRをサブクローニングするとともに、クローン化したE7-CTLを用いてT-iPS化を金子分担者が行う。これをRAG2-KOによって大量生産することで輸注療法の基礎を固める予定である。HLA-A0201の癌細胞株があるので、ヌードマウスを用いたT-iPS輸注療法の有効性を検討する。 iRC由来癌幹細胞では、ヌードマウスへの接種により、腫瘍形成能を正常癌細胞と比較する。HPV16と18の表現型の違いから扁平上皮癌か腺癌の違いを調べ、HPV16とHPV18による分化への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
子宮頸癌患者の末梢血からのE7特異的CTLのクローニングを実施する必要があるが、そのためにはHLAアレルタイプのスクリーニングが必要となる。そのための費用が次年度に必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
E7特異的CTLエピトープが知られているHLA-A0201は、日本人の約20%である。この条件を満たす子宮頸癌患者を抽出するためには、最低でも20名の患者のHLAタイピングを次年度に行う予定である。
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