研究課題
昨年度までにiPS技術を用いた2つの研究を遂行してきた。1つは、iPS細胞から患者自身のリンパ球を再生(T-iPS細胞)させ、ヒトパピローマウイルス(HPV)E7蛋白質に対する免疫療法に繋げる研究である。分担者の立川博士が子宮頸部上皮内腫瘍の患者血中からE7特異的CTLを検出した。現在、クローニングに向けてのexpansionの条件を決めている。分担者の金子博士は、子宮頸癌の前段階として卵巣癌の癌抗原であるGPC3を認識できるT-iPS細胞の樹立に成功し、担癌マウスにおいてその免疫細胞療法の有効性を示した。川名はiPS細胞から子宮頸癌の発生母地である組織幹細胞(子宮頸部の移行帯にあるリザーブ細胞)を分化誘導させることに成功した(iRC細胞)。iRC細胞に発癌性HPVを導入した子宮頸癌幹細胞を再現させた。発癌性HPVとして、HPV16、HPV18を導入しており、子宮頸部から発生する扁平上皮癌、腺癌(HPV18優位)のそれぞれのモデルになりうると予想している。現在、これを動物に接種することで子宮頸癌の癌細胞を標的とする創薬のための動物モデルを作成している。一方、川名は子宮頸癌の癌幹細胞を特徴づけるために、非癌幹細胞と癌幹細胞の比較をメタボローム解析を用いて検討した。癌幹細胞には、TCAサイクルを利用したエネルギー代謝が効率的に行われていることを見出し、その機序にFocal adhesion kinase (FAK)経路とグルタミン代謝が亢進していることを見出した。この特異な代謝はmTOR経路の活性化を誘導していることから、FAK阻害剤を用いると癌幹細胞を標的とする治療法の可能性を示した。以上から、iPS技術を用いた子宮頸癌に対する治療戦略を多角的検討した。子宮頸癌に対するT-iPS細胞療法はまだ基礎段階であるが、癌幹細胞標的治療については今後TR研究に繋がると考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (2件)
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