卵巣癌の発生・進展に関わる宿主免疫のゲノミクス解析と治療開発への基礎的検討

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26293359
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 濱西 潤三 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80378736)
• 研究分担者: 小西 郁生 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90192062) ; 松村 謙臣 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20452336) ; 安彦 郁 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20508246)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: がん免疫逃避機構 / 卵巣癌 / がん免疫療法 / 免疫ゲノミクス

研究実績の概要

本研究では、卵巣癌の発生（発癌）やがん進展（浸潤・転移）における宿主免疫の作用メカニズムを解明し、がん免疫に関する新規の卵巣癌予防や治療戦略を開発することを目的として、卵巣癌発生やがん進展過程における局所免疫状態の経時的変化の解析をおこなった。まずマウス卵巣癌発癌モデルでの卵巣局所免疫の経時的解析については、卵巣癌細胞株から、がん遺伝子を発現あるいは、がん抑制遺伝子の発現抑制を行った細胞株を作成し、マウスに投与した結果、in vivoでの腹腔内での局所芽根期状態の経時的変化をとらえることができた。経時的に腹水、腹腔内腫瘍組織を摘出し、凍結切片や組織の発現マイクロアレイやメチル化アレイを行い、発癌過程に生じる局所の免疫細胞の分布や免疫関連遺伝子やシグナルの変化を中心に網羅的に解析を行い、それらの発現を免疫染色やフローサイトメトリーにて確認する。さらに網羅的遺伝子発現解析を用いて、卵巣癌の免疫抵抗性（免疫逃避能）獲得に関わる因子の探索を行っている。なおISIIRTgマウスについては現在なお提供依頼をしている。
さらに、仮想抗原OVAを発現するマウス卵巣癌細胞株を作成し、OVA抗原を認識するT細胞をもつOT-1マウスへの繰り返し投与による免疫抵抗性（免疫逃避能）獲得能を有する細胞株を樹立と未知の免疫抑制因子の同定については、すでにマウス卵巣癌細胞株ID8-OVAの作成しており、OT-1マウスへの投与を始めている。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在、卵巣癌細胞株を用いた免疫抵抗性（免疫逃避能）獲得における免疫因子の探索に向けて、予定通りにin vivo, in vitro実験が遂行できている。自然発癌マウス（米国から）の入手が遅れているが、上記実験が進行しており、進捗状況を鑑みて再依頼をする予定である。

今後の研究の推進方策

まずは、平成26年度に引き続いて、免疫抵抗性のマウス卵巣癌細胞株を樹立と未知の免疫抑制因子の同定するとともに、マウス卵巣癌発癌モデルでの卵巣局所免疫の経時的解析を行い、がん関連遺伝子改変卵巣癌細胞担持マウスでの免疫学的変化をフローサイトメトリーなどのタンパクレベルや遺伝子発現アレイ解析による網羅的比較解析を用いて、新規の免疫抑制因子を探索する予定である。さらに、免疫抵抗性細胞株ID8-OVA-IRを早急に樹立することで、近年度予定しているcDNAライブラリー作成に向けて実験が推進できる。

次年度使用額が生じた理由

現在実験計画中のマウス遺伝子DNAライブラリー作成資材の購入が、実験の進捗に従って延期しているため、その周辺の試薬、マウス等の購入含め次年度へ一部研究費を繰り越した。

次年度使用額の使用計画

今後、実験の進捗に応じて、マウス遺伝子ライブラリー作成準備およびスクリーニング等に用いる周辺の試薬やマウス購入等に活用する予定。

研究成果

• [雑誌論文] IFN-γ from lymphocytes induces PD-L1 expression and promotes progression of ovarian cancer. (2015)
  • 著者名/発表者名: Abiko K, Matsumura N, Hamanishi J, Horikawa N, Murakami R, Yamaguchi K, Yoshioka Y, Baba T, Konishi I, Mandai M.
  • 雑誌名: Br J Cancer 巻: 未定 ページ: 未定
  • DOI: 10.1038/bjc.2015.101
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] The BMP signaling pathway leads to enhanced proliferation in serous ovarian cancer-a potential therapeutic target. (2015)
  • 著者名/発表者名: Peng J, Yoshioka Y, Mandai M, Matsumura N, Baba T, Yamaguchi K, Hamanishi J, Kharma B, Murakami R, Abiko K, Murphy SK, Konishi I.
  • 雑誌名: Mol Carcinog. 巻: 未定 ページ: 未定
  • DOI: 10.1002/mc.22283
  • 査読あり
• [雑誌論文] Invasion of uterine cervical squamous cell carcinoma cells is facilitated by locoregional interaction with cancer-associated fibroblasts via activating transforming growth factor-beta. (2015)
  • 著者名/発表者名: Nagura M, Matsumura N, Baba T, Murakami R, Kharma B, Hamanishi J, Yamaguchi K, Abiko K, Koshiyama M, Mandai M, Murata T, Murphy SK, Konishi I.
  • 雑誌名: Gynecol Oncol. 巻: 136 ページ: 104-111
  • DOI: 10.1016/j.ygyno
  • 査読あり
• [雑誌論文] Menstrual cyclic change of metastin/GPR54 in endometrium. (2015)
  • 著者名/発表者名: Baba T, Kang HS, Hosoe Y, Kharma B, Abiko K, Matsumura N, Hamanishi J, Yamaguchi K, Yoshioka Y, Koshiyama M, Mandai M, Murphy SK, Konishi I.
  • 雑誌名: Med Mol Morphol. 巻: 未定 ページ: 未定
  • 査読あり
• [雑誌論文] 話題の疾患と治療 免疫チェックポイントPD-1経路を標的とするがん治療への臨床応用(解説) (2015)
  • 著者名/発表者名: 濱西 潤三, 万代 昌紀, 小西 郁生
  • 雑誌名: 感染・炎症・免疫 巻: 44 ページ: 387-389
• [雑誌論文] Clinical approaches to treating papillary squamous cell carcinoma of the uterine cervix. (2014)
  • 著者名/発表者名: Nagura M, Koshiyama M, Matsumura N, Kido A, Baba T, Abiko K, Hamanishi J, Yamaguchi K, Mikami Y, Konishi I.
  • 雑誌名: BMC Cancer 巻: 14 ページ: 784
  • DOI: doi: 10.1186/1471-2407-14-784
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] STAT1 Drives Tumor Progression in Serous Papillary Endometrial Cancer. (2014)
  • 著者名/発表者名: Kharma B, Baba T, Matsumura N, Kang HS, Hamanishi J, Murakami R, McConechy MM, Leung S, Yamaguchi K, Hosoe Y, Yoshioka Y, Murphy SK, Mandai M, Hunstman DG, Konishi
  • 雑誌名: Cancer Res 巻: 74 ページ: 6519-30
  • DOI: 10.1158/0008-5472.CAN-14-0847
  • 査読あり
• [雑誌論文] 難治性卵巣癌の克服を目指して 化学療法抵抗性卵巣癌の局所免疫の解析に基づいた、がん免疫逃避を標的とした新規治療戦略（第53回日本産科婦人科学会 学術集会 シンポジウム腫瘍） (2014)
  • 著者名/発表者名: 濵西潤三
  • 雑誌名: 日本産科婦人科学会雑誌 巻: 66 ページ: 2777-2791
• [雑誌論文] 【新たながん治療戦略の鍵を握るPD-1抗体:がん免疫療法が、がんを制する】PD-1抗体の臨床 進行卵巣がんに対する抗PD-1抗体療法(解説/特集) (2014)
  • 著者名/発表者名: 濱西 潤三, 万代 昌紀, 小西 郁生
  • 雑誌名: 細胞工学 巻: 33 ページ: 1057-1060
• [雑誌論文] 【がん免疫抑制・免疫疲弊と新規治療】 免疫チェックポイントPD-1/PD-L1経路を標的とする新しいがん治療(解説/特集) (2014)
  • 著者名/発表者名: 濱西 潤三*, 小西 郁生
  • 雑誌名: 癌と化学療法 巻: 41 ページ: 1071-1076
• [雑誌論文] 【がん免疫療法の進歩】 Immune-checkpoint阻害によるがん免疫療法(解説/特集) (2014)
  • 著者名/発表者名: 濱西 潤三
  • 雑誌名: 細胞 巻: 46 ページ: 405-408
• [雑誌論文] 卵巣癌のMolecular Medicine 遺伝子発現解析に基づく卵巣癌の薬剤選択を目指して(解説) (2014)
  • 著者名/発表者名: 松村 謙臣, 村上 隆介, 山ノ井 康二, 山村 省吾, 山口 建, 濱西 潤三, 吉岡 弓子, 馬場 長, 森 誠一, 小西 郁生, 万代 昌紀
  • 雑誌名: 日本婦人科腫瘍学会雑誌 巻: 32 ページ: 203-210
• [学会発表] Durable anti-tumor response of Nivolumab (anti-PD-1 antibody) for platinum-resistant ovarian cancer; phase II clinical trial <Scientific Plenary> (2015)
  • 著者名/発表者名: Hamanishi J, Mandai M, Matsumura N, Abiko K, Baba T, Yamaguchi K, Konishi I
  • 学会等名: Annual Meeting on Woman’s Cancer
  • 発表場所: Chicago
  • 年月日: 2015-03-31 – 2015-03-31
• [学会発表] 文部科学省 橋渡し研究加速ネットワーク～抗PD-1抗体（Nivolumab）を用いたプラチナ抵抗性再発・進行卵巣癌に対する治療効果と安全性の評価～ (2015)
  • 著者名/発表者名: 濱西潤三、清水章, 池田隆文
  • 学会等名: 文部科学省・厚生労働省 革新的医療技術創出拠点プロジェクト 「医療イノベーション創出ネットワークの現状と展望―新しいフェーズに入ったアカデミアのシーズ開発」平成26年度成果報告会
  • 発表場所: 東京コンベンションセンター
  • 年月日: 2015-03-05 – 2015-03-05
• [学会発表] 府民公開講座 京都府内の専門医によるがん診療の最前線 (2015)
  • 著者名/発表者名: 濵西 潤三
  • 学会等名: 府民公開講座
  • 発表場所: 京都府立医科大学図書館ホール
  • 年月日: 2015-02-22 – 2015-02-22
  • 招待講演
• [学会発表] 抗PD-1抗体（Nivolumab）を用いたあたらしいがん治療 (2015)
  • 著者名/発表者名: 濵西 潤三
  • 学会等名: The 10th Kyoto Hematology Forum
  • 発表場所: ウェスティン都ホテル京都
  • 年月日: 2015-02-21 – 2015-02-21
  • 招待講演
• [学会発表] 卵巣癌に対する抗PD-1抗体を用いた医師主導第II相治験 (2015)
  • 著者名/発表者名: 濵西 潤三
  • 学会等名: がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン 第3回 トランスレーショナルリサーチシンポジウム「がん免疫療法の最前線」
  • 発表場所: 慶応義塾大学
  • 年月日: 2015-02-14 – 2015-02-14
  • 招待講演
• [学会発表] Immunotherapy with anti-PD-1 antibody (Nivolumab) is promising: Phase II trial for platinum-resistant ovarian cancer (2014)
  • 著者名/発表者名: Junzo Hamanishi, Masaki Mandai, Noriomi Matsumura, Kaoru Abiko, Jin Peng, Naoki Horikawa, Kumuruz Murat, Tsukasa Baba, Ken Yamaguchi, Ikuo Konishi
  • 学会等名: 第43回日本免疫学会学術集会 The 43rd JSI Workshop
  • 発表場所: 京都国際会館
  • 年月日: 2014-12-11 – 2014-12-11
• [学会発表] 免疫チェックポイントPD-1経路を標的とした 新しいがん治療 (2014)
  • 著者名/発表者名: 濵西 潤三
  • 学会等名: 第11回 がんワクチン療法研究会学術集会 特別講演
  • 発表場所: 東京女子医大
  • 年月日: 2014-11-22 – 2014-11-22
  • 招待講演
• [学会発表] A Phase II Clinical Trial of Immunotherapy with Anti-PD-1 Antibody (Nivolumab) in Advanced/Relapsed, Platinum-resistant Ovarian Cancer (2014)
  • 著者名/発表者名: Junzo Hamanishi, Masaki Mandai, Noriomi Matsumura, Kaoru Abiko, Jin Peng, Naoki Horikawa, Tsukasa Baba, Ken Yamaguchi, Ikuo Konishi
  • 学会等名: 15th Biennial Meeting of The International Gynecological Cancer Society
  • 発表場所: Melbourne Australia
  • 年月日: 2014-11-08 – 2014-11-08
• [学会発表] 『がんへの挑戦～京都大学の取組み～』世界が注目！ (2014)
  • 著者名/発表者名: 濱西潤三
  • 学会等名: 市民公開講座
  • 発表場所: 京都大学
  • 年月日: 2014-10-19 – 2014-10-19
  • 招待講演
• [学会発表] Immune checkpoint PD-1 signal: the metastatic promotion of ovarian cancer and the target of new treatment strategy (2014)
  • 著者名/発表者名: Junzo Hamanishi, Masaki Mandai, Noriomi Matsumura, Kaoru Abiko, Jin Peng, Naoki Horikawa, Tsukasa Baba, Ken Yamaguchi, Ikuo Konishi
  • 学会等名: 第73回日本癌学会学術集会 シンポジウム The 73rd JCA Symposia
  • 発表場所: パシフィコ横浜
  • 年月日: 2014-09-27 – 2014-09-27
• [学会発表] がん治療のパラダイムシフト ～抗PD-1抗体（Nivolumab）を用いた卵巣癌への挑戦～ (2014)
  • 著者名/発表者名: 濵西潤三
  • 学会等名: 平成26年度 一土会講演会 特別講演
  • 発表場所: ホテルアソシア静岡
  • 年月日: 2014-09-03 – 2014-09-03
  • 招待講演
• [学会発表] 抗PD-1抗体（Nivolumab）を用いた卵巣癌に対する第II相医師主導治験 （最優秀演題賞受賞講演）） (2014)
  • 著者名/発表者名: 濵西潤三、万代昌紀、池田隆文、南 学、森由紀子、松本繁巳、竹馬俊介、村山 敏典、松村謙臣、安彦郁、山口建、植田彰彦、森田智視、清水章、本庶佑、小西郁生
  • 学会等名: 第52回 日本癌治療学会学術集会
  • 発表場所: パシフィコ横浜
  • 年月日: 2014-08-29 – 2014-08-29
• [学会発表] Efficacy and safety of anti-PD-1 antibody (Nivolumab: BMS-936558, ONO-4538) in patients with platinum-resistant ovarian cancer (2014)
  • 著者名/発表者名: Junzo Hamanishi, Masaki Mandai*, Takafumi Ikeda, Manabu Minami, Atsushi Kawaguchi, , Masashi Kanai, Yukiko Mori, Shigemi Matsumoto, Toshinori Murayama, Shunsuke Chikuma, Noriomi Matsumura, Kaoru Abiko, Tsukasa Baba, Ken Yamaguchi, Akihiko Ueda, Satoshi Morita, Masayuki Yokode, Akira Shimizu, Tasuku Honjo, Ikuo Konishi
  • 学会等名: The 50th Annual meeting of American Society of Clinical Oncology (ASCO2014)
  • 発表場所: Chicago
  • 年月日: 2014-06-01 – 2014-06-01
• [学会発表] シンポジウム：腫瘍 難治性卵巣癌の克服を目指して 化学療法抵抗性卵巣癌の局所免疫の解析に基づいたがん免疫逃避を標的とした新規治療戦略 (2014)
  • 著者名/発表者名: 濵西 潤三
  • 学会等名: 第66回 日本産科婦人科学会学術講演会
  • 発表場所: 東京国際フォーラム
  • 年月日: 2014-04-19 – 2014-04-19
• [備考] 京都大学医学部附属病院 産科婦人科 ホームページ
  • URL: http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~obgy/