研究課題/領域番号 |
26293360
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00452392)
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研究分担者 |
馬淵 誠士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452441)
磯部 晶 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60397619)
木村 正 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90240845)
橋本 香映 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90612078)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / マイクロRNA / 腹膜播種 / 低酸素刺激 |
研究実績の概要 |
まずは低酸素刺激による変動するマイクロ RNA の網羅的解析を行った。卵巣がん細胞株 CaOV3 および RMUG-S に低酸素刺激 (1% O2, 48時間)を与えた上で、RNA を抽出し、その miRNA の発現を正酸素状態 (20% O2) を対照として Taqman miRNA microarray (Applied Biosystem) を用いて、網羅的に解析し、その両細胞で低酸素刺激によって発現が変動するmiRNA のリストを作成した。4種の miRNA の発現が低下し、5種の miRNA の発現が増加していることが判明した。それら候補 miRNA が制御する可能性がある分子を TargetScan や Diana-T といったアルゴリズムソフトを用いて in silico に検討し、hsa-mir199a-3p (以下 miR-199a-3p)がチロシン受容体キナーゼの一つである c-Metの発現を制御することわかった。続いて、卵巣癌細胞株における miR-199a-3p の発現量と c-Metの発現量の検討を行い、両者が逆相関の関係にあることを見出した。さらに miR-199a-3p の強制導入および阻害剤導入による c-Met の発現変動を解析し、miR-199a-3p の卵巣癌細胞株に導入することにより、 c-Met の発現が減少し、さらに癌細胞の接着能、浸潤能が有意に抑制されることが判明した。最後に miR-199a-3p の導入により卵巣癌腹膜播種を抑制できるかの検討を実験動物マウスで検討した。卵巣がん細胞株 SKOV3 に miR-199a-3p の配列を含んだレンチウィルスベクター(miRNA Lentivectors, Biosettia社)を導入し、miRNA 安定発現株を作成、それを腹腔内投与することにより形成される腹膜播種がコントロールと比べて抑制されるかの検討を行った。miR-199a-3pの遺伝子導入により、播種病変、腹水形成が著明に抑制された。これらの成果を Oncotarget に投稿し、Accept された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した通り、計画通り実験は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はエクソソームに焦点をあてた研究を行う。まずは培養が容易な卵巣癌細胞よりのエクソソームを回収する。現在、卵巣癌細胞株 HeyA-8 を用いて、エクソソーム抽出の試行錯誤をしている。この手法にて実験に必要なエクソソームが抽出電子顕微鏡で確認する。続いて、初代培養した腹膜中皮細胞にこの卵巣癌細胞由来のエクソソームを添加して、腹膜中皮細胞にどのような形態喧変化がみられるか検討する。さらにエクソソームが卵巣癌細胞の浸潤能を亢進するかのIn Vitro 実験を行う。以上の検討により、エクソソームの卵巣癌浸潤における役割の同定をめざす。 続いて、卵巣癌細胞由来エクソソームに含まれるmiRNA の発現解析と腹膜播種に与える影響を解析する。上述の方法で回収した2種(HeyA-8, TYK-nu)の卵巣癌細胞株由来エクソソームと不死化した正常卵巣上皮(IOSE)より回収したエクソソームより miRNeasy Mini Kit (Qiagen)を用いてRNA を抽出する。Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent) でRNA の Quality Check を行い、Small RNA が豊富に含まれていることを確認した後に、これら検体に含まれる miRNA の発現を miRNA microaay (3D-gene, 東レ)法で網羅的に検討する。IOSE における miRNA と比べて、2倍以上もしくは、0.5倍以下の発現変動を有意と判定し、HeyA-8, TYK-nuの両方の細胞で発現が変動している miRNA 群を抽出して解析を行う。具体的には、まずその miRNA の発現変動がエクソソームを添加された腹膜中皮細胞でも観察されるかを中皮細胞 RNA による miRNA RT-PCR 法で検討する。さらに、発現が上昇している miRNA に関しては、エクソソーム添加腹膜中皮細胞にmiRNA 阻害剤をTransfection することにより、腹膜中皮細胞の形質転換がキャンセルされるかどうかの検討を行う。これらの検討を通じて卵巣癌細胞由来エクソソームに含まれる miRNA を同定しその腹膜播種における役割の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画自体は順調に進行しており、予算も消化している。26年度の実験計画では腹膜中皮細胞などから抽出したエクソソームを用いたMiRNA Microarray実験を予定していたが、費用が高額であり、一回しかできないため、確実かる純度の高いサンプルの調整に時間を要した。そのため、その分の費用を次年度に持ち越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
上述した通り、抽出したエクソソームを用いた MiRNA Microarray に用いる予定である。
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