研究課題
平成28年度は卵巣癌細胞が分泌するエクソソームに焦点をあてた。漿液性卵巣癌細胞株HeyA-8およびTYK-nu そしてコントロールとして不死化した正常卵巣上皮細胞(IOSE)を用いてエクソソームを抽出し、エクソソームを蛍光色素で標識し、エクソソームの腹膜中皮細胞への取り込みを確認した。さらに細胞の形態を観察したところ、もともと敷石上の腹膜中皮細胞が、紡錘状に変化していた。そこで詳細な解析を加え、エクソソームにCD44が含まれること、腹膜中皮細胞にそのCD44が伝達されること、それにより、腹膜中皮細胞の上皮間葉移行が起こっていることを確認した。さらにエクソソーム中に含まれるmiRNA に焦点を当てた。マイクロアレイ解析を行い、卵巣癌細胞エクソソームに特異的に高発現している候補マイクロRNAを検討し、miR-99aを抽出した。58名の卵巣癌患者、26名の卵巣良性腫瘍患者および12名の健常女性より採取した血清中において、miR-99aの発現を検証し、バイオマーカーとしての可能性を検討した。卵巣癌患者の血清中において、miR-99a-5pの発現は健常者と比べて有意に上昇していた(3.55倍)。ROC曲線ではAUC 0.82で、カットオフ値1.57(健常女性の平均を1とした場合)とすると、感度60%、特異度84%であった。I期卵巣癌(n=26)での発現が2.64であったのに対して、II-IV 期卵巣癌(n=32)での発現は4.55であり、有意差はなかったものの、その発現は病勢をある程度反映していた。術前・術後の血清中miR-99aの発現を比較すると(n = 19)、術後に有意な減少を認め(p=0.04)、miR-99aの発現が腫瘍由来である可能性が示唆された。すなわち、血清miR-99aの発現は卵巣癌の病勢を反映しており、新たなバイオマーカーとなりうる可能性が示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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