研究課題/領域番号 |
26293361
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
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研究分担者 |
吉元 千陽 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00526725)
重富 洋志 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20433336)
吉田 昭三 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (40347555)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子宮内膜症癌化 |
研究実績の概要 |
なぜ性成熟期女性10人に一人が子宮内膜症を発症し、そのうちの1%が発癌するのか?を解明するため、以下の4項目を検討する。①インプリンティング遺伝子から子宮内膜症候補遺伝子を同定:男性および女性のみに発現しているインプリンティング遺伝子群から子宮内膜症疾患候補遺伝子を同定する。②酸化ストレスの影響を受ける遺伝子群の同定:嚢胞内に含まれる鉄はFe3+(三価の鉄)優位で、酸化ストレスの結果、G(グアニン)⇒T(チミン)変異が起こる。この影響を受けやすい遺伝子群を抽出する。③細胞死を免れるストレス抵抗遺伝子の同定:HNF-1beta下流の複数の解毒因子の中から候補遺伝子を同定する。④細胞周期停止と遺伝的不安定性蓄積機構:内膜症における細胞周期停止機構の解明と遺伝的不安定性蓄積による癌化のプロセスを解明する。平成27年には、細胞死を免れるためのストレス抵抗遺伝子の同定、細胞周期停止と遺伝的不安定性蓄積の証明、子宮内膜症関連卵巣癌の治療:Chk1およびClaspinをターゲットとした前臨床がん治療を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不死化子宮内膜間質細胞を用いて脱落膜化に関与するインプリンティング遺伝子を同定するために、不死化子宮内膜間質細胞を用いて、絞り込まれたインプリンティング遺伝子を導入あるいはノックアウトした細胞を樹立した。ホルモン+cAMP添加により脱落膜化を促進し、脱落膜化マーカーIGFBP1, PRL発現および形態変化を観察し、脱落膜化を抑制する機能的遺伝子を絞り込むことに成功した。 さらに、染色体マップを作成し、インプリンティング遺伝子座の相互作用を検討した。複数の候補インプリンティング遺伝子は染色体11p15.5近傍に局在していた。絞り込まれた遺伝子の遺伝子座を正確に同定し、胎児期成人病仮説で重要なIGF2遺伝子座との連関性を探索しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
1)遺伝子変異ARID1Aの生物機能解明 不死化子宮内膜間質細胞にクロマチン再構築に関与するARID1AとARID3Aの遺伝子導入およびsiRNAノックダウン細胞を作成し、E2Fやp53の発現変化を調べARIDの生物作用、特にアポトーシス、クロマチン再構築、細胞周期変化を分子生化学的及び細胞生物学的に解明する。 * 不死化子宮内膜間質細胞への遺伝子導入がうまくいかない場合は卵巣癌細胞で代行する。 2)ARID1A、PIK3CA変異に関してトランジション変化の部位と頻度の同定 過去に報告されたARID1A遺伝子変異の部位を、酸化ストレスで生じた変異8-oxodGの部位と重ね合わせ、両者が一致するかどうか確認する。さらにPIK3CAに関しても遺伝子変異の部位と酸化ストレスによるトランジションの部位と頻度を検討する。
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