近年、我が国では悪性腫瘍が増加傾向で、新規癌治療薬の開発が切望されています。申請者らは、ヘパリン結合型増殖因子HB-EGFが卵巣癌の治療標的分子であることを証明し、HB-EGF特異的阻害剤BK-UMの開発を行ってきました。本研究の目的はBK-UMの治療適応を診断する精度を高めるコンパニオン診断薬を開発することです。 平成28年度には、卵巣癌の予後を予測するバイオマーカーとして、ノンコーディングRNAといわれるmiRNAのうち、miR-135a-3pが卵巣癌の予後を反映することを明らかにしました。さらに、卵巣癌患者血清を対象に実施したマイクロアレイ解析によりHB-EGF値が高く、予後不良患者で有意に発現が上昇する5つのmiRNAを明らかにしました。また、HB-EGF値が低く、予後不良患者で有意に発現が低下する5つのmiRNAを同定しました。これらのmiRNAを用いて、44例の卵巣癌患者血清を対象にreal-time PCR法で発現解析を行い、臨床的意義を確認しました。これら9つのmiRNAに加えて、前年度までに同定した6つのmiRNAがコンパニオン診断薬の候補であると予測されます。 現在、同定した15個のmiRNAのプラスミドベクターを作成しました。これらのプラスミドベクターを卵巣癌細胞株へ遺伝子導入し、腫瘍増殖能の変化を検証します。さらに、遺伝子導入した細胞株をマウスに皮下移植し、生体内での腫瘍増殖能を検証する予定です。 これまでに得られたデータをもとに、さらに研究を継続し、BK-UMのコンパニオン診断薬の開発を目指します。
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