研究課題
本研究では、加齢卵子の全能性に関する質の低下を受精卵の段階で具体的な分子を明らかにしていく。胎盤機能への影響は、新規に樹立する栄養膜幹(TS)細胞の解析からアプローチする。さらに、将来バイオマーカーとして臨床応用可能な受精卵の分泌型miRNA解析を目指している。今年度は、実験動物マウスを用いたTS細胞樹立のためのβ-Catenin遺伝子欠損胚作出する系を構築した。加えて、着床前期胚でのβ-Catenin遺伝子発現動態をタンパク質レベルで解析するため抗体を選定し、内部細胞塊(ICM)と栄養膜外胚葉組織(TE)でβ-Catenin発現を評価し得た。バイオマーカー開発では、分泌型のマイクロ核酸解析系を目指し、今年度はヒト多能性幹細胞培養液を対象に網羅的なmiRNA解析の可能性について検討した。培地中のエキソソーム抽出を行い得て、エキソソーム由来のRNA抽出が安定して出来ることをバイオアナライザー等により定量的に確認出来た。微量培地(1mL以下)から2000程度のmiRNA解析をするの構築に成功した。重要な成果として、微量サンプル網羅的miRNA解析系構築に加え、培養条件の違いにより培地中に分泌される核酸の量と質(種類)が大きく異なることを見出した。より微量試料、極微量サンプルにより安定して解析できる系が必要であるが、今回得られた多能性と関連する分泌型miRNAをより詳細に解析する必要がある。初期胚の機能性評価であるICMから胚性幹細胞およびTEからTS細胞を通し発生能に連動した分子機能評価を可能とするとともに、よりトランスレーションナルな知見が得られる培地試料由来miRNAの科学的評価も行っていく。今年度は、今後の本研究推進に重要な基盤を構築できた。
2: おおむね順調に進展している
微量培地試料に対する網羅的分子解析としてエキソソーム抽出を行いエキソソーム由来のRNA抽出が安定して出来ることができたのは大きな成果であり、それより得られたmiRNA群が細胞動態と関連性があることが示唆され本研究目的が必要性のあるものであることが裏付けられた。
胎盤機能評価系として動物実験モデルマウスを用いたTS細胞樹立評価を行っているが、その基盤構築を重点に進める。
解析に出す予定であった検体の準備に想定よりも時間を要したため、外注解析費の支出が困難となり次年度使用額が生じた。
今年度に解析準備が整った解析検体について順次外注解析を行っていく予定であり、翌年度分助成金と合わせた支出を計画している。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
Regenerative therapy
巻: 1 ページ: 18-29
10.1016/j.reth.2014.12.004
Nature Communications
巻: 5 ページ: 5464
10.1038/ncomms6464
Nature Chemical Biology
巻: 10 ページ: 632-639
10.1038/nchembio.1552