研究課題/領域番号 |
26293364
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
阿久津 英憲 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (50347225)
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研究分担者 |
菅沼 亮太 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (30528211)
浜谷 敏生 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60265882)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 卵子 / 成熟 / X染色体 |
研究実績の概要 |
本研究では、加齢卵子の全能性に関する質の低下を受精卵の段階で具体的な分子を明らかにしていく。胎盤機能への影響は、新規に樹立する栄養膜幹(TS)細胞の解析からアプローチする。今年度は、実験動物マウスを用いたTS細胞樹立を行うとともに、着床前期胚発生と着床周辺期の胎盤発生期までに組織学的および分子発生動態的にも劇的に変動することに着目し卵子得意的な現象を切り口に分子機序を解明していく研究を進めた。私たちはこれまで、受精卵(雌)のX染色体が着床するまでの期間で精子由来細胞核優先に不活性化され、一方で卵子由来X染色体が活性化しているというインプリント型のX染色体不活化機構が卵子細胞核のX染色体ヒストンH3のリジン9番の3つのメチル基修飾(H3K9me3)によるものであることを世界で初めて見出した(Fukuda, et al. Nat. Comm., 2014)。今年度は、卵子が成熟する過程(新生児期から成体)では、DNAメチル化はX染色体不活化機構に関与せずX染色体の一部のクロマチン凝縮が受精後のインプリント型X染色体不活化に寄与していることを見出した。さらに、新生児期卵巣内の未熟な卵子から成体卵巣内の成熟卵子(原始卵胞期)内では、体細胞核と比較し大きく転写活性が低いことを発見した。発現動態からの分布では、極端に発現活性が低い遺伝子の割合が高い二峰性分布を示していた。ヒト卵子でも同様の傾向を示すものの、マウスほど顕著ではないことも初めて明らかにした。これは、いままで報告されていないXist遺伝子発現に依存しないX染色体不活化動態制御機構が卵子成熟過程では存在することを新たに発見した。この機構をさらに解明することで、不育症や加齢に伴う卵子の質に関する分子機序を解明できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵子成熟とその機能性獲得に関係するクロマチン及びX染色体発現動態を初めて見出すことが出来た。マウスを用いて本質を見出す検証を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
βカテニンノックアウトマウス胚からのTS細胞樹立を進め、胎盤発生の体外培養系構築を目指す。ヒト組織による解析は、近年、本邦では不可能な規模での解析結果が他国から報告されそのデータは公的データバンクへ蓄積されている。その公的データを利用することでマウス解析からヒト発生分子機序への展開を的確に行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬納期が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に試薬が届き次第、執行予定。
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