研究課題/領域番号 |
26293367
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉崎 智一 金沢大学, 医学系, 教授 (70262582)
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研究分担者 |
脇坂 尚宏 金沢大学, 大学病院, 講師 (70377414)
近藤 悟 金沢大学, 大学病院, 助教 (70436822)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 上咽頭癌 / 代償性増殖 / EBV / 細胞競合 / エクソゾーム |
研究実績の概要 |
研究開始の背景 Epstein-Barr ウイルス(EBV)は上咽頭癌,鼻性NK/Tリンパ腫などの原因ウイルスである.本申請では我々耳鼻科医を始め,世界中のEBV研究者や上咽頭癌研究者が解答を見出していない以下の点にアプローチする.それは,「浸潤能を有しないウイルス感染細胞がどのようにして周囲の正常細胞にとってかわって上咽頭で増殖することができるのか?」である.EBVはBリンパ球に潜伏感染し,散発的に再活性化しウイルスを放出する.一方で、癌が発生するのは唾液と接触する口蓋扁桃や舌根扁桃ではなく,唾液と関連が薄い上咽頭(咽頭扁桃)である.おなじ扁桃輪にあって何が異なるのであろうか? 平成27年度までに上咽頭癌由来細胞株c666-1からEBVがコードするRNAであるEBERsがエクソゾームの形で分泌されることを確認した。正常上咽頭細胞株Ad-AHと混合培養したところ、同細胞内にエクソゾームマーカーであるCD63とEBERsが同時に検出されとことからエクソゾームとして分泌されたEBERsがAd-AH細胞に取り込まれることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌細胞と正常細胞のせめぎあいは新しい建造物を建てる際に古い建造物をこわしてその場所にあった建造物のとってかわる、スクラップアンドビルド方式と類似する。「作業仮説:エクソゾームによる細胞内物質の分泌とそれを介して細胞間で相互作用が生じるという現象を上咽頭癌発癌機構に置き換えて読み解くと、申請者が観察した正常細胞におけるEBERs発現は、EBV陽性腫瘍細胞が細胞外に分泌したEBERsが正常細胞に取り込まれた状態を観察している。その結果、腫瘍周辺細胞は死にゆく細胞へと形質が変化する。そして、代償性増殖機構により上咽頭癌細胞が周囲へと浸潤拡散してゆく。」 に矛盾しない結果が着実に得られていることから上記評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
上咽頭癌周囲にいる細胞がSPARCを発現していることが判明した。SPARCは膵癌や胃癌などで癌細胞が発現することで予後不良因子となるアポトーシス抵抗性に働く因子である。このゾーンがEBERs陽性細胞のゾーンとオーバーラップすることから上咽頭癌における癌周囲細胞がSPARCを発現する意義について検討を進める。 癌周囲正常細胞がEBERs発現で細胞死誘導スウィッチがオンになったのち SPARCで細胞死に抵抗し死ぬ細胞から死にゆく細胞化 することで、癌細胞の細胞死誘導機構に抵抗を示す。しかし、その際に放出する増殖因子は正常細胞にも癌細胞にも働くはずであるが、時間とともに、腫瘍細胞が死にゆく細胞の細胞死後にその場所を占拠し、代償性に増殖していることが予想される。 AD-AHにEBERsを発現させてSPARCタンパクが誘導されるかをウエスタンブロットで調べる。その次にAD-AHとC666-1と混合培養した場合、または、C666-1の培養上清のみを添加した場合、各々についてSPARCタンパク発現を比較し、SPARC発現は細胞競合が起こらないと誘導されないのかを検証する。 また正常咽頭上皮由来株AD-AHへ単独でEBERsを形質導入した場合の細胞の変化と上咽頭癌細胞株C666-1と境界を設けて接した場合との変化について、とくに細胞死誘導機構について、アポトーシスをtunnel染色で、オートファジー関連死をbeclin発現で比較する
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