研究課題/領域番号 |
26293368
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤枝 重治 福井大学, 医学部, 教授 (30238539)
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研究分担者 |
徳永 貴広 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (10464075)
野口 恵美子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40344882)
高林 哲司 福井大学, 医学部, 助教 (70397272)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アレルギー性鼻炎 / Dectin 1 / Apolipoprotein A4 / ヒスタミン遊離 |
研究実績の概要 |
Dectin-1は、樹状細胞やマクロファージにおいてβ-グルカンを認識してSykを活性化させることによって抗真菌に対する免疫反応を起こす重要な因子であるが、肥満細胞株:RBL-2H3に対し、Dectin-1のアゴニストで処理するとIgE高親和性受容体に非依存的にチロシンリン酸化を起こすことが判明した。さらにマイクロアレーおよびreal time PCRにてDectin-1を介した刺激は、MCP-1、IL-3、IL-4、IL-13、TNF alpha といったサイトカインやNfkbiz転写因子の遺伝子発現を亢進させることが判明した。そしてそれらは、Sykの阻害薬R406にて消失した。これらのことからDectin-1が肥満細胞刺激において重要な因子であることが判明した。 舌下免疫療法において誘導されるApolipoprotein A4(ApoA4)のノックアウトマウスを作成、OVAアレルギー性鼻炎モデルを作成した。野生マウスに比べてApoA4ノックアウトマウスでは、くしゃみ回数と鼻掻き回数の減少を認めた。抗原特異的IgE産生、総IgE産生、IL-4、IL-13、IFNの産生は変化がなかった。抗原刺激によるin vitroヒスタミン遊離試験においては、ApoA4ノックアウトマウスおいてヒスタミン遊離の有意な減少を認めた。しかしOVA鼻腔反復刺激による好酸球浸潤程度には違いを認めなかった。スギ花粉症のニホンサルにおいて、麻酔下でスギ抗原刺激を行うとアコースティックライノメーターにて鼻腔容積の著しい低下をきたす。そこでリコンビナントApoA4(50 mg/mL、1日1回100μL/片鼻)を反復点鼻群とサル血漿を点鼻したcontrol群で比較検討すると、rhApoA4は抗原点鼻による平均鼻腔開存率の低下を,即時相及び遅発相でいずれも軽度抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肥満細胞における活性化分子としてDectin-1を見出し、その活性化がIgE非依存的に行われることを証明した。このことは、抗原非刺激下においても肥満細胞の活性化が起こることを意味している。すなわち抗原非存在下でも、Dectin-1などの抑制を必要とすることがわかる。肥満細胞のヒスタミン遊離抑制作用を有するApoA4に関し、ノックアウトマウスによる解析、スギ花粉症モデルにおけるリコンビナントApoA4の治療分子の可能性を検討できた。結果的には、鼻噴霧ステロイドに比べ弱い作用であったが、今後どのように進行させるのかある程度の見極めができた。 一方で、ヒト末梢血から肥満細胞の誘導が可能となり、肥満細胞へのIgE結合、脱顆粒の可視化ができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト末梢血から肥満細胞の誘導が可能となり、肥満細胞へのIgE結合、脱顆粒の可視化ができるようになった。そのため、ApoA4、Allergin-1、Intelectin-1、CST-1、IL-33、IL-25における脱顆粒への影響を調べる。同時に好塩基球のCD203c発現を指標として、抗原刺激時におけるこれらの因子の影響を調べる。ApoA4産生は、腸上皮細胞が主であるため、腸上皮細胞株を用いて、どのような刺激で産生が亢進するのか調べる。 次世代シークエンサーの結果から、2つの因子に関して、詳細な研究を進めていく。免疫組織化学、real time PCRでの発現をアレルギー性鼻炎ありなしで比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンサーの実験が遅延したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シークエンサーの実験に用いるとともに、遺伝子関連試薬等を購入する。
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